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そこで待ってて…のtetsuのレビュー・感想・評価

そこで待ってて…(年製作の映画)
3.5
学生映画祭で作品を観て以来、武石監督作品のファンなので、鑑賞。

リモートワークが日常の一コマとなった現代。マッチングアプリ"タップル"を始めた女性・美咲は……。(「魔進戦隊キラメイジャー」『ベイビーわるきゅーれ』の水石亜飛夢さん出演作)

"心が温まる"タイプの作品を得意とする監督とマッチングアプリの大手"タップル"という組み合わせで、一体どうなるのか予想がつかなかったが、しっかりと双方の要素が融合していて驚いた。

マッチングアプリを題材にした作品となると、個人的には、酒井麻衣監督のドラマ「38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記」が印象深かったのだけれど、そちらと比べて、本作の品の良さよ……。笑

「38歳……」は、実際のアラフォー女性によるエッセイを基にしているだけあって、結構ゲスい内容ではあった。

それを"映像の魔法使い"酒井麻衣監督がファンタジックに演出していたわけだが、本作は潔いほどにゲスい部分を感じさせないのがすごい。

しかも、その題材で男性監督が……、となると、女性を神聖化する描写が目立ったりと、男性作家特有の気持ち悪さを抱かせてしまいがちだが、そうなっていないのもすごい。(ふと、頭をよぎる『恋の墓』……。←いや、全然、自分は嫌いじゃないけれども。笑)

本作はヒロインに対して「可愛い」という感情に終始する描き方なので、こういう辺りには、作り手の女優に対するリスペクトと人の良さが滲み出ていたようにも思う。

そのため、そういう点も含めて、マッチングアプリという存在のイメージアップを図る作品としては文句無しの内容と言えると思う。

また、どうしても企業案件という面が否めない作品ながらも、監督の工夫を感じられる遊び心あふれる演出が面白い。

スマホ鑑賞と親和性の高い"通知"エフェクトやマッチング行為と服選びを重ね合わせるアイデア、一捻りある意外なオチなどなど。

惜しむらくは、監督の優しさ溢れる作風が諸刃の剣となり、これといった見せ所に欠ける点。

意外性が先行しすぎた結果、すんなりと腑には落ちないラストも含め、良作ゆえに気がかりな点もあったが、待つ甲斐はあった監督の新作だった。

参考

【短編映画】「そこで待ってて…」主演:山本亜依 出演:水石亜飛夢 監督:武石昂大
https://youtu.be/NSOg-aIevO4
(本編はこちら。)
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