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マジックタウンのtetsuのレビュー・感想・評価

マジックタウン(2018年製作の映画)
3.7
直近で最もハマった邦画『君は放課後インソムニア』の池田監督が手掛けた"映画作りドキュメンタリー"ということで興味を惹かれ、鑑賞。

2011年から袋井市で小中学生を対象に行われている「映画をつくろう!」ワークショップ。地元出身の池田千尋監督が監修を務めるイベントでは数々のドラマが……。2016年の模様に密着したドキュメンタリー映画。

小・中学生が地元PRをテーマに映画作りを体験していく中で集団活動を学んでいくのが面白い。

リーダーシップがとれずに孤立へと追い込まれる男の子、執筆した脚本の変更に納得がいかずに挫折してしまう女の子、協調性が乏しく崩壊寸前の男女グループ……などなど。

描かれる問題の数々は些細なことだけれど、社会に生きる上で避けては通れないトラブルも多く、大人が見ても学ぶことは多い作品だと思った。

また、監督の主義ともいえる「決まりに縛られない自由な作品作り」「大人と子供の対等な関係」が、内容においても作品の構造においても良い影響を与えていた。

作中では無理に全てのグループを取り上げず、「ドラマティック」な部分を抜粋。監督がイベントで抱いた後悔から海外の学校を取材する……などの場面もあり、低予算といえども飽きない構成になっていた。

また、子供に密着した企画でありながらも、関わった大人の失敗をごまかさずに残している部分には誠実な映画作りの姿勢を感じる。

映画作りをサポートする大人が一人のメンバーを味方してしまったことでチームの内部分裂が加速してしまったり、完成した映像データを運営側のミスで消してしまい、池田監督と制作スタッフの山口さん(後述)が謝りにいったり……。

大人が作る子供のドキュメンタリーという題材だからこそ陥りがちな「作り手の美談」になることを避けていたのが良かった。

ちなみに単館系の映画ファンとしては中々アツい布陣にもテンションが上がる。

演出・編集として、いまやヨーロッパ企画を代表する監督・山口淳太さん(『ドロステのはてで僕ら』『リバー、流れないでよ』)が参加、さらに、パペット演出を飯塚貴士さん(『COMPLY+ーANCE』の1編ほか、日本映画界において稀代のミニチュア監督)が担当していた。

制作におけるハラスメント問題の告発や、過酷な労働環境の是正など、映画作りのあり方が見直されている今だからこそ、再評価されてほしい一作だった。

参考
映画「MAGIC TOWN」予告編
https://youtu.be/-1eGZqDWHb4?si=pWIS9-mpFtURPfYz

映画の制作現場からハラスメントについて考える | 大九明子×深田晃司 対談 - 映画ナタリー
https://x.gd/FksbH
(映画制作におけるハラスメントについて述べたとても興味深い対談。)
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