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どちらをのtetsuのレビュー・感想・評価

どちらを(2018年製作の映画)
3.0
『四月になれば彼女は』から川村元気さんの携わる作品に興味を持ったため、鑑賞。

スーパーの一角。
2つの商品を手に取った女性が悩んでいる。どちらを選ぶべきか……。人生は選択肢の連続。これは、ある親子の大きな選択を描く実験的な物語。

正式なタイトルは『どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている』。

近年、Netflixではインタラクティブ形式(途中で現れる選択肢を受け手が選んで展開を決めるゲーム的手法)の作品が登場している。

本作はそんな形式に近いものの、提示された選択肢を選ぶことが出来ずに放り投げられるという、まさしく「シュレディンガーの猫」形式と言える作品である。

監督は5人。
ピタゴラスイッチの監修ほか、様々なCMを産み出した佐藤雅彦さん。
そのゼミ生だった関友太郎さん・豊田真之さん・平瀬謙太朗さん。
そして、プロデューサー・小説家・監督等でも活躍する川村元気さんだ。

佐藤さんとゼミ生の3名は、カンヌを目指す映画制作プロジェクト"c-project"を立ち上げ、「手法がテーマを担う」というコンセプトのもと"filmlet C"という作品群を発表。
本作もその1つで、見事、カンヌ国際映画祭にも出品されている。
(ちなみに"c-project"は『宮松と山下』の監督集団"5月"の前身でもある。)

川村さんと佐藤教授の対談をきっかけに企画が始動した本作は、教授の著作に登場する数学的理論を人間ドラマに落としこんだ試み。

そのため、物語映画ではあるものの、実験的な要素が強く、ある意味ではCM的とも言える作品だった。

そのため、短編映画としての評価は難しいが、表現技法としては面白く、現代アート的な視点では、かなり好みな作品だった。

参考

■Web

佐藤雅彦研究室/表現手法の探求 短編映画群 "filmlet C” 製作(c-project(主宰:佐藤雅彦 東京藝術大学教授) 2017/04/06 公開) - クラウドファンディング READYFOR
https://readyfor.jp/projects/c-project
(本作に繋がったクラファンページ。構想段階の企画内容がすでに面白い。)

川村元気、佐藤雅彦らが世界に仕掛けた短編映画。“数学的理論”を“ヒューマンドラマ”に導くまで|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
https://moviewalker.jp/news/article/149201/ 

■書籍
新しい分かり方 佐藤雅彦|特設ページ|中央公論新社
https://www.chuko.co.jp/special/atarashii/
(本著に収録されている映画と同名の企画が原案とのこと。)

理系に学ぶ。 | 川村 元気 |本 | 通販 | Amazon
https://x.gd/bz00S
(おそらく、原点となった川村さん×佐藤さんの対談を収録した一冊。)
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