tetsu

走れない人の走り方のtetsuのレビュー・感想・評価

走れない人の走り方(2023年製作の映画)
4.5
大阪アジアン映画祭にて鑑賞。

映画のロケハンにやって来た3人の男女。その中心にいるのが映画監督のキリコだ。固まらない主演女優のブッキング、予算により限られていくロケーション。難航する映画制作の影響は次第に日常生活をも浸食していき……。果たして、彼女は「ロードムービー」を完成させることが出来るのか?

お世辞抜きで今年ベストだったかもしれない……。特にプロデューサー役の早織さん、主演・山本奈衣瑠さんのキャラクターと会話シーンが好きだった(山本さんは初主演映画『猫は逃げた』を思い出さずにはいられない展開も含め)。

作品の系統で言えば、いわゆる「映画を作る映画」なので、それだけで面白いのは間違いないのだが、本作はその中でもかなり異質。

脚本執筆や撮影時の苦労・編集作業などはあえて描かれず、写し出されるのが監督の私生活や観客たちの姿という部分に驚きがあった。

一見、地味な題材にも関わらず、自然と惹きつけられるのは、主人公の描写、飽きさせない展開や演出など、作り手による苦悩の賜物だと思う。

また、「物語」「監督の頭の中にある映画」「劇中劇」などが交錯する作風も印象的だった(この辺りは『王国(あるいはその家について)』にも通ずる面白さがある)。

余談だが、ギリギリのタイミングで場内に駆け込んだところ、冒頭の演出により、唯一無二の体験を味わうことになったのも良い思い出。

作り手の実体験を反映したからか(詳しくはコメント欄にて後述)、「映画作りの苦悩と面白さ」にリアリティを感じられる物語で、その真摯な姿勢に、自然と勇気づけられる秀作だった。

※上映後の監督トークが興味深かったため、自分のメモとしてコメント欄にて追記(作品の内容に触れるため、ネタバレ注意)。

参考
Kentaro Gomiさん(@__perimeni)からのポスト
https://twitter.com/__perimeni/status/1763510950278340992?t=qWaPncDT4kmvpv4QLX93WQ&s=19
(大学時代の信頼する後輩がフライヤーデザインを担当したので、こちらも要チェック!)
tetsu

tetsu