mura

ヴィレッジのmuraのレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
4.3
薪能から始まる。それをじっと見つめる少年。霞のなかの村を俯瞰的に映す。丘のうえにそびえ建つ巨大工場。…一気に引き込まれた。これが面白くないはずがないと。

ひなびていく小村・霞門村。村を見下ろすように産業廃棄物の処理工場が建つ。ここで黙々と働く優。ギャンブル依存の母親の借金を返しながら。あるとき、同級生のミサキが東京からもどって来る。そして工場で働くという。ミサキは工場の広報を担い、産廃のリサイクルを紹介して村おこしを図ろうとする。そこで広報の顔とされたのが優。死んだように暮らしていた優が、しだいに前を向いていく。しかし同じく同級生で、工場の社長の息子となるトオルは、優の活躍を、またミサキとの関係を面白く思わない。そして事件がおこる…って話。

能の「邯鄲」に基づいた話。この演目は「夢は儚い」ということを語るもの。それを過疎化社会、地方再生、産廃処理、イジメ、マスメディアなど、現代的問題に寄せながら描いていて、それが面白く、またわかりやすい。

そして何といっても、映像が素晴らしい。霞のなかの村の風景、闇のなかの人の表情…深く印象に残った。

田舎ならではの閉塞感、しがらみ、序列、そして理不尽…そういったものが表現されていて、リアル。そこがいい。
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