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福田村事件のmuraのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.4
湯布院映画祭にて。井浦新、田中麗奈、柄本明ら俳優陣が参加するシンポジウムもあって。

森達也が劇映画を監督するということで、これは見なければと。しかもちょうど100年前、関東大震災のときにおこった朝鮮人虐殺に焦点を当てたものとのことで、より興味が湧いて。

しかしこの「福田村事件」、まったく知らなかった。この映画を制作するきっかけも、知らなかったことにショックを受けたからだという。

そしてこの映画、朝鮮人差別の問題だけをいうのかと思っていたら、違った。被差別部落の問題も絡み、最後は水平社宣言にまでふれる。いずれにしても、こういった映画を制作しようとしたことに驚きをおぼえるし、一方でさまざまな抵抗が予想されたであろうに、制作の意志を貫いたことに感銘をおぼえる。

関東大震災の混乱のなか、千葉県東葛飾郡福田村でおこった虐殺事件について描いたもの。ここで詳細な経緯はふれないが、最後の、いうなら「虐殺シーン」は、大きな盛り上がりを見せる。目が離せないというか、心が離れないというか、平たくいえばドキドキが止まらない。そしてそのなかに、登場人物たちの注目すべき言葉がならぶ。劇映画として、ここは大成功だったと思う。衝撃的であり、素晴らしかった。

おそらく史実を重視しながらも、脚色は小さくないんだろう。でもそれはきっと確信的。客観的な視点なんて必要ない、こういった問題があったという事実を世間に何がなんでも訴えるんだということを優先させたんだろう。

そして、映画の力を信じているんだろう。

人間は残虐性をもつ生きもので、それは日本人にも無縁ではないんだということを歴史は確実に物語っている。これを肝に銘じないといけない。日本人は特別だなんていうひとは何も見えていない。いや、見ようとしていない。…ということを訴えかける映画。これを「反日」というのなら…それもまったく見えていないのかと。
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