mura

月のmuraのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.3
はじめ、「宮沢りえ」を認識できなかった。あの溌剌としてエネルギーあふれる「宮沢りえ」がこの悩み多く不安定な「宮沢りえ」にたどり着いたのかと…。女優としての変貌ぶり、そして成長ぶりに感動をおぼえる。

書けなくなった作家・洋子。洋子を温かく見守る夫と静かに暮らす。洋子は障害者施設で働きはじめる。そこで一緒に働くことになる陽子やさとくんは一見ポジティブにも見えるが、ほかの職員の障害者への対応は問題も多く、施設にはどこかネガティブな空気が流れる。また施設にはほとんど反応を示すことができないきいちゃんがいて、洋子は彼女に自分を重ねる。こういったなか、さとくんがとんでもないことを計画する…

重い。問いかけてくるものが「重い」という意味で。

(以下ネタバレ)
さとくんは障害者を殺めていくなかで「ひとは殺していない」という。障害者は「ひと」ではないと。

洋子はそれを否定しつつも、みごもった子供の出生前診断を考える。かつての経験もあって。障害があれば産まないとの選択も頭に浮かぶ。これはさとくんの考えとどう違うのか…

こういったところでどうしても「重い」ものを感じる。選択を迫られるので。

あの事件をもとにこういった話を作るんだと、この創造力に驚く。

そしてあの東日本大震災後にはびこった美徳。きれいごとでは済まされないんよ!っていう、問題提起も感じられて。そこには共感をおぼえた。
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