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658km、陽子の旅のmuraのレビュー・感想・評価

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)
4.0
いわゆるロードムービーというものは、クセがあるが「いいひと」たちと出会い、主人公はしだいに前を向いていく…というのが定番だと思うが、この映画ではなかなか「いいひと」に出会えない。でもこれは悪くなかったように思う。主人公は結局は自分で前を向いていくところに主張があらわれているようで。

陽子は42歳。東京で長くひとり暮らし。ただいわゆる「コミュ障」で引きこもり。あるとき陽子の父が死んだといとこが告げに来る。そして一緒に実家がある青森にもどることに。戸惑いながらも青森に向かうが、スマホが壊れていたこともあり、途中でいとことはぐれてしまう。どうしようもなくなった陽子は、仕方なくヒッチハイクで青森に向かう…

青森までの658キロの旅は、陽子が故郷を離れてからの20年間をさかのぼるものとなも。その間におこった東日本大地震の痕跡をたどりながら。20年間会っていないためまだ若い風貌の父親(オダギリジョー)の影とともに。

旅で出会うひとたちの影響もあるが、結局は陽子自身で気持ちを落とし込んでいく。そしてこれまでの思いをぶちかますかのような独白。ここがピークで、たしかに引き込まれる。世のなかの、いわゆる「ロストジェネレーション」を代表しての「ぶちかまし」のようで。菊地凛子も会心の演技。

でも…それまでのロードが長いかな、やっぱり笑

「こんなわたし…」と自分を過小評価しつづけた「ロストジェネレーション」の思いを代弁する映画なのかと。

『絆確かめ合う日本』という本を書いたライターを最高の「ゲス」に描くところに偽善への嫌悪があらわれ、そこは共感。
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