むらむら

ファンタスティック・プラネットのむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
(今回の感想長いですが、渋谷HUMAXシネマへのイチャモンが後半の半分を占めるので、そこは読まなくて良いです)

「見ろ!人がゴミのようだ!」

をリアルで実感できる1973年公開、チェコ発のカルトアニメ。

渋谷HUMAX​シネマで鑑賞。

惑星イガムでは、「進撃の巨人」のように巨大なドラーグ族に人類が支配され、人類はゴキブリのように虐げられている。主人公のテールは、赤ん坊の頃からドラーグ族にペットとして育てられた男の子。テールは、なんとかそこから逃げ延びて、地下に潜む野生の人間たちと生き延びる術を見つけようとする。

徹頭徹尾、不条理かつ悪夢的描写。

まず、ドラーグ族の見た目が怖い。ハゲた半魚人みたいな風貌だし、驚かせ系GIFで出てきたら泣いちゃいそう。しかも1日の半分は泡みたいなのに包まれてドローンみたいにフワフワと空を漂ってる。こんなのがいっぱい空中を漂ってる世界、イヤすぎる……。そりゃ人類も絶望して、地下に引きこもりたくなるわ。

加えて、ドラーグ族が持ち出す、人類を駆除するための道具も、「うわー、きっつー!」と声が出てしまったくらいにヤバい仕掛けが満載。詳細は鑑賞してほしいのだが、大量に人類を始末するのに効率的な兵器がボコボコと出てくる。

俺が特にイヤだったのは、ポップコーンみたいにポンポン毒ガスを散布する機械と、掃除機のように人間を吸い込む機械。もしかして、「ファンタスティック・プラネット」の原作、北の将軍様じゃないですよね!?

いや、あながち間違いじゃないかもしれない。ソビエト連邦がチェコスロバキアに軍事介入したのが1968年。制作に5年を費やして1973年に公開されたので、当時のソ連からの抑圧、ソ連への恐怖が、この作品に影響を与えているというのは想像に難くない。つか、「SNS」でも思ったけど、チェコ人、病みすぎ。

いまちょうど「三体」って中国のSF小説の第三部を読んでるのだが、人類を虫ケラ同然に扱う、ドラーグ族と三体文明の設定に共通するものを感じてしまった。そういえばソ連と中国、どちらも……(察し)。

俺、この世界観、かつ、この絵柄だったので、途中まで半分本気で「キャラクターデザイン・諸星大二郎」なんじゃないかと疑ってた。

それくらい世界観と絵柄が伝説的カルト漫画家の諸星大二郎っぽい。ググったら、諸星大二郎本人も、この作品を「生涯ベスト作」の一つに入れてるのを発見。やっぱそうだよね!

加えて、テリー・ギリアム的なシニカルさを感じる部分も多々あり、俺のように、諸星大二郎もモンティ・パイソンも敬愛する人種にとって、この作品はマスターピースに成り得ると思う。

子供はトラウマ映画になること確実なので、間違ってもお子さんと一緒に観ないように!

ところで、俺が鑑賞した渋谷HUMAXシネマ、館内が「ファンタスティック・プラネット」で滅茶苦茶デコレートしてあるし、誰も飲む気にならなそうなドラーグ族の不気味な色をあしらった健康に悪そうなコラボドリンクとか発売してるし、スタッフの意気込みがとても伝わってきた。

だからこそ、開演前の映像に関して、色々と言いたいことがある。

■以下、渋谷HUMAXシネマへの難癖に近いイチャモンです。不快に思われる方は読み飛ばしてください■

1.ミクチャの宣伝

場内消灯直後、最初に流れたのが、素人ライブ配信プラットフォーム「ミクチャ(MixChannel)」の宣伝。

ミクチャの人気女子高生YouTuberが「私を観てくださいね! ミクチャをチェック!」って、スクリーン上から「ファンタスティック・プラネット」を楽しみに待っている満員の客席に語りかける。

……これ、誰に響いてるんですかね?

こっちは、わざわざ緊急事態宣言中の土曜日に、水色のキモいドラーグ族を好き好んで観に来てるツワモノ揃いですよ!?

残虐なドラーグ族のグッズとか買っちゃってウキウキしてる連中ですよ!?

悪いけど、天真爛漫な女子高生に興味ある人、絶対いないよ!

これミクチャから宣伝費もらってやってんだろうけどさ、「ファンタスティック・プラネット」の客層が、これ観て「わーい、ミクチャやってみよ!」とは、絶対にならないよ!

TOHOシネマズとか見習って欲しい。TOHOシネマズ、着席して最初に出てくるのは、月曜に映画が安くなる「auマンデイ」の宣伝。ちゃんとマーケティングされてるじゃん。渋谷HUMAXシネマ、なぜ、こんな当然のことが出来ない……。

もしかして「渋谷だから『ミクチャ』とか興味ある若くて新しいものに敏感な連中が来てるに違いない!」みたいな安易な考えで、クソみたいな広告代理店にネジ込まれたの? だったら、その広告代理店は、無能すぎる。

ここの客は、同じ渋谷でも、スクランブル交差点を迂回して、イメージフォーラムとヒューマントラストとシネクイントとアップリンク(閉館したけど)とBunkamuraを、衛星軌道でグルグル回ってる連中ですよ。渋谷の街中より、映画館の館内にいる時間のほうが長い連中ですよ。たぶんミクチャよりもfilmarksの登録率の方が圧倒的に高いですよ。

なので、完全に「その客層」であるところの俺にとって、この「ミクチャ」の宣伝は、申し訳ないけど「イラっ」とさせられただけだった。

2.よく知らん二人組YouTuberによる番宣

次に上映されたのが、映画「RUN」の宣伝。

映画「RUN」、「search/サーチ」の監督による最新作で、車椅子の女性が、毒母から逃げ出すスリラー。俺的にも注目の一本だ。

だったら、普通にトレーラーを流してくれれば良いのに、出てきたのは、自称「映画を面白可笑しく語る」放送作家のオッサンYouTuber二人組。

いやいや、あんたら、誰なのよ? 面白可笑いかどうかは主観なのでコメントは省くにしても……なんであんたらが紹介してるわけ? 同じ有名人だとしても、アイドルに興奮気味に語ってもらうとか、色々やり方あるでしょ。

だったら、さっき出てきた「ミクチャ」の女子高生が観て失神してる姿を映すとかさ。思い切って、伊名是夏子さんとか乙武さんにこの映画の魅力を語ってもらう、とかさ。そういう方が、よっぽど理にかなってると思うんだけど。

百歩譲って、この二人のYouTuberをどうしても出したいなら、椅子に踏ん反り返って喋ってないでさ、それこそ「No More映画泥棒」の映像みたいに、必死で走って逃げながら「RUN」の魅力を語るとか、それくらい体を張ってよ。キミらYouTuberでしょ!?

映画をマニアのものだけにしたくないという心意気は買うが、もうちょっと他にやり方あるんじゃないかなぁ。

ただ、一応、「ファンタスティック・プラネット」のTシャツ着てたとこは評価する。

3.上映前注意の映像

ここまで無茶苦茶書いてしまった。

実際、俺、「上映前注意の映像」を観るまでは「渋谷HUMAX、マーケティング下手すぎかよ……」って暗澹たる気分になっていた。

だが、この映像を観て、俺の気持ちは180度、変化する。

「渋谷HUMAX、最高!」

ドラーグ族の全身コスプレした女性コスプレイヤーが、完全にドラーグ族になりきって「上映中は、席を立たない……」といった案内をしてくれる映像。

かなりコスプレの再現度も高く、おそらく合成で、ドラーグ族が10人くらい一同に介するキモい絵もあったりして、製作者の強い愛を感じる。

さらに、ドラーグ族の女性は、映画でも水色の乳首が透けてみえてる設定なのだが、丁寧にそこまで再現されていたことを、俺は見逃さなかったぜ!

乳首ポッチリ、0.5秒ほどの登場ではあったが、俺の乳首センサーが即座に反応。「されど心の目は開いておる!」とばかりに、しっかりとドラーグ族の乳首ポッチリを記録することが出来た。

ちなみに上映前に秒速でググったら、コスプレイヤーは北見えりさんというセクシー系コスプレイヤー。画像検索すると、大量のエロコスが出てくるではないか!

……ふぅ。

おかげで、それまでの暗い気持ちはスッキリと晴れて、楽しく「ファンタスティック・プラネット」を鑑賞することが出来た。渋谷HUMAX、やれば出来る子!

神様仏さま渋谷HUMAXシネマさま、今度もこんなファンタスティックなコラボを続けてくれたら、毎回通わせて頂きます!

(おしまい)
むらむら

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