らくだ

FALL/フォールのらくだのレビュー・感想・評価

FALL/フォール(2022年製作の映画)
4.5
バカのYouTuberが、バズり目的(と、過去クライミング中に恋人を亡くした友人のトラウマに対するショック療法だという名目で)で高さ600m越えの廃棄された電波塔に登るが、その頂上で老朽化したハシゴが完全に崩れ落ちてしまい、ふたりはそこに取り残される…という新感覚高所恐怖症スリラーです。


とにかく…高所恐怖症にはつらい映画というか、高所恐怖症の人間が「何」に恐怖しているのか、を熟知している性格の悪い最悪な人間が作ってる映画です(これは褒め言葉です)おかげで観てる間ずっと手の汗が止まりませんでした。明るくて街も見えて、という開放的な場所なのに、確実に自分たちが致命的な遭難をしている、と感じられる恐怖感や絶望感もあり…

基本的に高い塔の半径1メートルそこそこの足場だけで話が進むワンシチュエーションスリラーなんですけど、展開やストーリーの流れが多彩で、恐怖や緊張感を煽るカメラワーク(これがまたこえぇんすよ…)のおかげで単調な感じはなく、ひとつ仕込まれた大仕掛けのおかげもありむしろ「使い切った」満足感さえあります。発端は軽率でバカなのですが、登場人物が極限状況でしっかり生き延びるための最適行動を絞り出そうとしているため、そういうイライラ感もなく観られました。
高所恐怖症にはしんどい映画ではあるんですけど、この映画を真に楽しめるのは高所恐怖症の人間なのではないかなぁと思います。難しいジレンマですね

ぼくは高所恐怖症が高じてスカイツリーのガラス張りの床に近づくことさえできなかった人間なので、こんなことできる人は心底尊敬します…高所恐怖症でなかったとしても死んでも行きたくないですけど…
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