ChanpuruPoo

VESPER/ヴェスパーのChanpuruPooのネタバレレビュー・内容・結末

VESPER/ヴェスパー(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

バイオテクノロジーが発展・暴走した未来世界。支配層が上空の「シタデル」で暮らす中、荒廃した地上世界で父親の介護をしながら暮らすヴェスパー(ラフィエラ・チャップマン)はある日、墜落した飛行艇に乗っていた少女カメリア(ロージー・マクエヴァン)と出会う…。

未来世界が舞台だが、きらびやかなハイテク世界ではなく、その下で虐げられる被支配層の人々に物語を見出だした作品。地味ではあるが、安っぽさは感じさせないVFXで表現された独自の世界は、未来世界であるにも関わらず、ときに中世的、ときにファンタジックな雰囲気が漂う。寝たきりの父親の身代わりとなるドローンがとてもキュートで面白いガジェットだ。ドラマ的にも、世界に居場所がなく、出会うはずもなかった二人の少女が絆を結ぶまでの過程が丁寧に描かれていく(序盤、人造人間が殺される様子をヴェスパーが少し笑いながら見るという描写があり、弱いものがさらに弱いものを虐げる構図が痛々しかったが、それだけに後半の展開はよりエモーショナルだ)。ヴェスパーの父親が、この先何が起こるかを理解した上で、彼女を助けるための"嘘"を優しく語りかける場面も、おそらくヴェスパーも内心これが別れになることに気づいているように見える点も含め、心を揺さぶられた。生き残った子供達がシタデルにたどり着いてめでたしめでたしと思いきや…のラストは、地を這うような抵抗の物語の幕引きとして納得感があった。
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