yukihiro084

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのyukihiro084のレビュー・感想・評価

4.3
怒りで泣きそうになる。
嫌悪感で震えてくる。

ジョディ・フォスターの(告発の行方)の
ようなその行為をダイレクトに描く描写は
出てこない。そもそもワインスタイン役が
まともに出てこない。だが、映画全体には、
ワインスタインの狂気や異常性や恐怖が
覆っている。いや、実際は、映画界全体に、
それらは覆い尽くしている。

映画は、静かに進んでゆく。
映画って面白い。こんか描き方が
あるのか、と驚く。
こんな切り口、こんなアプローチが
あるとは思わなかった。これだから、
映画って観てみないとわからない。

中身はこんなにもセンセーショナルな
内容なのに、声を荒げる場面も
掴み合いの喧嘩も泣き叫ぶ場面も
描かれることはない。
追いつ追われつの追いかけっこも、
窓が破られることも銃で脅したりしない。

それでも、恐ろしい。

取り返しがつかないほど人生を壊された人。
夢見た世界で悪夢を見せられた人。
深い傷と記憶を背負い、そのキャリアを
終わらせた人。

映画は、2人の女性ジャーナリストを
描く。2人とも母親だ。普通の母親。
声をあげた被害者の1人も母親だ。
彼女たちの子供や旦那とのやりとりも
丁寧に描かれる。勇気を出し声をあげ、
戦い始めたのは普通の母親たちだった。

キャリー・マリガン、
ゾーイ・カザンが
2人ともいい。

昔のリクルートの広告。
『あなたがいま辞めたい会社は
あなたが入りたかった会社です。』と。

俳優にしろ、ミラマックスの社員にしろ、
みんな夢と希望に満ち溢れていた。
どんな想いで会社を辞め、
どんな想いで自分の夢を諦めたのか。

どんな気持ちで。

人生を何度もやり直せればいい。
だけど、人生はたった一度だ。

凄まじい数の女性が手をあげた。
凄まじい数の女性が傷つけられた。
その声は誰にも届かない。

たった6年前のこと。それは6年前まで
見て見ぬふりをされていたってこと。

すごいものを観た。
まだ怒りで、泣きそうになる。
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