yukihiro084

フェイブルマンズのyukihiro084のレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.8
すごく良かったです。すごく。
最高でした。

息子は今も僕が即興で作った(お話)を
寝る前に聴きたがる。元ネタには困らない。
夕べから(息子がいろんな時代にタイム
トラベルして歴史的イベントに立ち会う)
シリーズを始めた。息子は言う。
『お父さん、授業で[物語を作る]ことを
やってるんだけど、物語ってどうやって
考えるの?』と聞いてくる。
『物語を作るってことは主人公を作るって
ことなんだ。主人公は誰でもいいんだ。
誰に喋らせるかなんだよ。例えば、
我が家の(玄関のドア)を主人公に
したら、(彼)は朝、僕らを見送る時、
めちゃくちゃ寂しい。代わりにみんな
帰ってくる夕方が、楽しみでしょうが
ないんだ。例えば、空に浮かぶ雲だったら、
その雲は小さいわた雲で、いつも
ひとりぼっちなんだ。だけど、いつも
低いところにいて、いつも僕らの生活を
ニコニコしながら家族も悪くないなーっ
て思ってたりしてね。そう考えると楽し
いでしょ?[物語]にルールはなくて、
主人公の設定も無限なんだよ。例えば、
色鉛筆であまり使われていない色の鉛筆
とか。お父さん、なんとなく寂しそうな
奴が好きなんだよ。』

スピルバーグの映画だけど、
お父さんの映画。そしてお母さんの映画。
スピルバーグのお父さんとお母さんへの
眼差しがどこまでも温かい。

映画を上手く撮れる才能を持った少年が
その才能を自覚し、伸ばし、そして
囚われてゆく。気付くと画角やアングル
を探してしまうようになってしまう。
目の前に打ちのめされている大切な人が
いたとしても、カメラを構えてしまう。
矜持というより、狂気がそこにはある。

ミシェル・ウィリアムズも良かったが、
僕はポール・ダノのお父さんが本当に
素晴らしい。ラストも素晴らしかった。
映画はスピルバーグのサクセスストーリー
ではなく、消えることのない少年の痛みを
描いている。

僕が10代の頃、親が離婚している。
まぁそれ以前に父親のことはよく知らない。
父親の愛情と言うのもよく知らない。
熊手みたいなので一生懸命記憶を
かき集めても、たいした思い出は
集まらない。そしてたいして知らない
まま、父は癌で逝ってしまった。

息子とはよく、お互いが観ている
アニメの話にしたり、一緒にアニメを
観ている。息子はブルーロックを語り、
僕はゴールデンカムイを語ったり。
近い未来、映画の話もたくさんしたい。
最近、息子は『お父さん』ではなく
下の名前で僕を呼ぶ。

『ジ・エンドで終わりじゃないんだ。』と
この作品は言う。その先があるんだ、と。
くっそ、泣けてくる。僕は(父親)という
キャラクターに弱い。

息子とお風呂で(呪術廻戦クイズ)を
お互いに出し合う。ななみん最高だな、
とグータッチ(息子にはフィスト・
バンプと教えてるけど)を僕らはする。
yukihiro084

yukihiro084