Ren

アバター:ジェームズ・キャメロン3DリマスターのRenのレビュー・感想・評価

5.0
『アバター』自体を初鑑賞。観るなら劇場で、と思っていたので、再上映を待ってこのタイミングで観た。お話云々ではなくアトラクションとして楽しめたらいいな〜と思って行ったら、最高の傑作に出会ってしまった感動....!

実写/CG、現実/虚構の境目を消した圧巻の映像美が、全編IMAXフル画角に堂々と映し出される166分の臨場体験。この映画が全て地球で撮影された事実すら忘れてしまう、気の遠くなるような撮影とVFX処理の賜物。これも、未知の惑星を舞台に、自分の意識をアバターに接続するという設定であるからこそ映える。
終盤の大規模戦闘へ向かうにつれ、衝突や爆発など映画館の爆音音響を楽しむ要素も上積みされていくのが素晴らしい。五感への刺激はラストまで尻上がりに伸び続ける。

こと映像美に関しては、個人的には夜と空中飛行の2つが圧倒的だと思った。全編ずっとどっちかでもいいくらい。息を飲むような発光生物の輝きも、鳥目線で動き回るスカイアクションも、映像作品ならではの興奮。

歴史的SF映画の多くがそうであるように、今作も「植民地支配」「戦争」の話で、かなり古典的。資源を求めて、技術的・立場的に優位に立つ集団が発展途上の集団を武力で制圧する。目的や対立関係、誰が敵で誰が味方かがとにかく分かりやすい。
胸熱な復讐譚に終始しないのも特徴的。犠牲と破滅のえげつなさや悲壮感はラストギリギリまでずっと描かれる。単なるヒーロー物語にしないという決意。根本の解決ではなく、人間の病理は治まらないという幕引きもまたリアル。
さらに好機は誰かの知恵や行動に伴って訪れるのではなく、ある種天災的にやってくる。桶狭間の戦いも豪雨が織田勢力に味方したように、戦の転機は神が運んでくるという展開もまたファンタジー的でありながら現実的でもあるのではと考えたりした。

長尺映画なので飽きたらどうしようと思ったが、それは杞憂だった。かなり編集は潔くカットを割っていた印象(ジェイク(サム・ワーシントン)達が捕まる→脱獄まで早すぎだろ、とか)。話が止まろうとも映像は止まらない。
映画とは没入。総評して、最高。

その他、
○ 映画ドラえもん、特に『~ 雲の王国』『~ 夢幻三剣士』を思い出した。支配の話と、現実から離れた場所に身を移して戦う話。
○ ナヴィ達が木の根に位置の上を歩いたり、列を為して登るシーンは蟻っぽいと思った。デザイン面で意識しているのだろうか。
○ 推しはヘリパイロットのトゥルーディ(ミシェル・ロドリゲス)。かっこよすぎ。
○ 高画質にヌルヌル動きすぎて、途中家電量販店の8Kテレビを見ているような感覚に何度かなってしまった....。
○ 障がいの用いられ方はネガティブだ。単に主人公の影や障壁として身体的ハンディを用いるのはどうなのか。ただ、アバターの世界なら何にでもなれる、という点の描き方は良い。某竜と姫の仮想現実の使われ方とは違う。
○ 白人が原住民の体を乗っ取って支配する白人酋長、という批評もあってその視点が抜け落ちていたと反省。後々冷静になって考えてみると、某アカデミー脚本賞映画(ネタバレなので控えるが)の批評性を無自覚に賞賛する作品にも思えてくる。アニメ版の『ポカホンタス』に全くノれなかったときのことを思い出した。
○ 本編後に『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の映像が流れたのだけど、自分が人生で観た映像の中で最も水と泡の表現が美しかった。
○ 評価と興行のわりに、あまり歴史に残っていない(『タイタニック』のように、たくさん語られている印象が無い)気がしてしまうのは、作品が「映画館で観る」という付加価値ありきだから、というのが大きそう。家のTVやPCで初めて観た人には特に語られない映画ではありそうなので、今後も定期的に再上映をやり続けてほしい....!
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