スカポンタンバイク

正欲のスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
2.5
※ストーリー展開のネタバレはしませんが、こういうシーンがあるって話はしてます。ご了承下さい。


端的には、まぁ私はダメでしたね。

良い所としては、役者の頑張りと絵作りですかね。話を完全にガン無視しても、画面としてはかなり観ていられる演技と絵になっているので、視覚体験としては結構良く応えてくれていたんじゃないかなぁと。特に稲垣吾郎は「窓辺にて」に続いて、役者として映えてたと思う。独特の冷徹さを出すのが本当に上手い。あと、東野絢香が本当に良くて、神経過敏な感じがもう全身から溢れ出ていて、キャラクターとしてのバックボーンとかはよく分からなかったが、出ている時の存在感は物凄かった。圧倒的に役者力って感じ。

ただ、肝心の話がどうも。原作は未読なのだが、多分原作に問題がないかなぁって感じた。とにかく凄いのが、水フェチサイドの主人公側が所謂一般大衆の事を悪意でしか見ていないという事だろう。別にそういう人がいないなんて言う気はさらさらないのだけれど、そんなに信用におけない人間ばかりではないだろう。てか、これは途中に佐藤寛太扮するダンサーが言っていた事でもあるけれど、どうしてそんなに所謂一般大衆を「理解する」側の立場でいると思い込んでいるのか。結局、やってる事は自分たちを差別してる人間と変わらないじゃないか。
ただ、そこは一応自覚的なのか、途中で新垣結衣が「大晦日になると誰かといたいとか普通の人みたいに思ったりする」みたいな事を言っていたりする。つまり、結構というか、この水フェチの人たちって、別に「水好きの普通の人たち」なのだ。てか、はっきり言って、水を眺めるのが好きとか、水の音が好きとかは、YouTubeにそういう動画が上がっているように、一定数好きな人がいるんで、別にそもそもそんな特殊な話じゃないだろう。最後の展開だって、別に水フェチだった事が原因なんじゃなくて、水フェチグループの中にいた違う趣向の人がやらかしたという話であって、水フェチに対する差別意識など描いていないじゃあないか。
だから、思ったのが、やはり水フェチっていうのがそもそもそんな特殊じゃあないって事なんだ。逆に、今作はそういう、そんな特殊でもないものを特殊視して、差別する側の視点を強化してると思う。ダイバーシティとか分かった気な要素が分かった気レベルに出ていたが、そういう差別問題とかLGBTQ+とかの話題を斜に構えて「理解した」気になってるんじゃないのか?と、今作は全体に底の浅さに溢れていて不快だった。
特に、本当に不快だったのが、新垣結衣と磯村勇斗がセックスごっこをするシーン。あれは本当に酷い。彼らは別に、普通に学校生活を送ってた人たちだろう。性の勉強だって普通に受けているはずの人たちだ。それが、あんな性の事をよく分かってないピュア人間みたいに描くなんて、水フェチの人たちっていうのを今作がそういう人たちって思っている事の表れでしかない。全然そんなシーンなかったが、これって一応特殊性癖を扱った作品なはずでは?なのに、主人公2人には性的な要素が備わってないプラトニックな関係って、おかしくないだろうか?

色々書いてきましたが、まぁ端的に凡庸な作品だと思いました。