へたれ

フェイブルマンズのへたれのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.2
良かったとこ1 自伝的映画として無駄がないプロット
2時間半の長さが20分ぐらいずつのエピソードで区切られていて、それぞれが単発のドラマのように導入と結末を持っている構成。それぞれのエピソードの結末が、主人公のサムと映画との関わり方に影響を与えていくのが巧み。
自伝的映画にありがちな、あれこれ詰め込みすぎて結局何が言いたいのか分からなくなってしまう失敗を、うまく回避していた。見えてくるテーマは、誰もが幸福になりたいと思いつつすれ違ってしまう家族の葛藤や、芸術に執着してしまった少年の業といった普遍的なもので、プロットに過不足がない。

良かったとこ2 ミシェル・ウィリアムズの表情
観客の共感を得にくい人物像で彼女の精神状況を語るシーンも少ない中、ミシェル・ウィリアムズの表情が絶妙だった。
特に、編集でカットされたキャンプの8ミリフィルムをクローゼットの中で見るシーンでは、表情だけで何が映っているかを想像させるとともに、精神的に追い詰められる表情に変わっていくのが良かった。

良かったとこ3 ラストシーン
この映画全体は、スピルバーグ映画らしいライティングと職人的なカメラワークで撮られているけど、ラストシーンだけは遊び心があるカットになっていて、そのギャップが良かった。最後の最後でスピルバーグ本人がちょっとしたジョークで締めくくる品の良さを感じた。

良かったとこ4 映画への重層的な思い
映画への愛を語る映画はたくさん作られるけれど、この映画ではフィルムに意図せず記録されてしまう事実や、編集によって事実を無かったことにする作為といった点も含めて映画への重層的な思いが語られていたのが良かった。こうした自己言及的な作品が作れそうなのは、現役ではスピルバーグかスコセッシぐらいなので、そういう意味でも映画が完成して良かった。
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