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フェイブルマンズのsymのネタバレレビュー・内容・結末

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

自伝的映画だという文言を見たので、
もっと本人(を投影してるであろうサミー)に焦点を当てた話かと思ってました。
でもタイトルThe Fabelmansですもんね。
家族の物語でもあったのでしょう。
その中でも父と母にかなり時間をかけて
描写されてましたね。

冒頭の映画に出会うシーンとか、わくわくしますね。ボーイスカウトの仲間たちと映画作りを楽しんでるときも、生き生きしててよかった。

ミッツィは本当に芸術家肌というか。かなり天真爛漫で少女みたいな人でしたね。そこも憎めないというか、魅力的な部分ではあるのですが、無邪気なら何してもいいわけじゃないですからね。確実に家族に傷を残してるじゃないですか。
(あと、あんなに傷ついてたのに、サミーの妹たちみんな母親に着いてってるのも理解し難い)
サミーに「許すって言って」っていうのも、狡かったな。自分を正当化したいんだなって思ってしまった。母親としては問題ですよね。
でもただ身勝手な人間ではなくて、彼女自身、自分の夢を諦めざるを得なかった過去があり、青春を奪われたんだなという感じですよね。だからこそサミーの夢を後押ししようとしてくれる気持ちがあったのかなと。逆に自分の子どもなのに、「私はやりたかったことが出来なかったのに!」と嫉妬する人間もいますから、そこは良かったと思いますね。

ベニーおじさんも悪い人ではないんでしょう。ミッツィの欲しい言葉をくれる人だったんでしょうね。バートは全肯定でミッツィの全てを受け入れてくれるけど、ベニーはいつもユーモアたっぷりで楽しくて、「その爪カチカチうるさいよ」って指摘してくれる。ミッツィに必要なのは、そういう人だったんでしょうね。

しかしバートの愛が深かったですね。そういうところも含めて理解して愛していたんだろうなというのが分かります。2人が理解し合って、愛し合っていたのは本当だったんだろうなと感じられるのが、まだ救いがあるかな。ホームパーティの写真を見たバートが、サミーの本当にやりたいことをやれるよう、後押ししてくれるのも良かった。

サミーは母親に似ていると妹から指摘されてましたけど、芸術を愛する人間が不安定になりがちなのはすごい分かりますね。良くも悪くも没頭してしまうし、クリエイティブな作業は心身を削りますから。途中登場した叔父さんが言ってた「犠牲を伴う」っていうのはそういうことかなと。

最初はただ楽しいだけだった映画制作が、誰かの人生を投影できることに気付いたり、他人の生き方に影響を及ぼしてしまったり、強いメッセージを込められるということも、自分の意図と違って受け取られることもあるということも、分かっていったんだなっていう、その過程も見られて良かったです。

あと最後の地平線のくだりからの演出が、クスッとなりました。終わり方としては最高でしたが、もう少し先を見てみたかったな。
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