スピルバーグの自伝的作品。やはりといえばやはり、スピルバーグはオタ臭い印象はありつつも基本的にはリア充であり、主人公の彼を取り巻く家族の温かさや映画への傾倒、それを後押しする深い教養と愛は不世出の才が世に出るのも必然だったと頷けてしまう。特に両親のキャスティングが素晴らしく、主人公と同様にやや発達傾向のある母親がたまらなくキュートかつ愛おしく、一見空気な父親がその母親に根底から惚れているのも伝わってきてそちらもたまらなく愛おしい。やはり自伝的作風とスピルバーグの父親への鬱屈や女性性との距離感などは両親のキャラクター造形からも伝わってきており、彼が離婚家庭に育ったことを思うととにかく示唆的であると思う。
興味深かったのは映画絶対主義者のように見えて、映像で撮ることの「業」の深さもしっかりと暴き出している点で、撮りたくない真実であったり、加工され強調された美意識、それを突きつけられた人々の反応には舌を巻いてしまった。撮ることはまさに暴力でもあり、肯定されずともやらずにはいられない衝動を芸術と呼ぶのだろう。
壮年期までやるかと思いきや、話自体は青年期が中心であり、最後の捻りにもクスッとしてしまった。2時間半という大作ながら、中弛みのしないスピルバーグらしい嘘のない良作であると思う。
