しろくま

銀河鉄道の父のしろくまのレビュー・感想・評価

銀河鉄道の父(2023年製作の映画)
3.7
《ゆくゆくは賢治を盛岡の中学さ行かせてやろうと思います》
〝質屋に学問など必要ねえ。下手に文学や芸術にかぶれてみろ。よっぽど始末が悪い〟〝私は父さんとは違う。新しい文明開化の時代の明治の父親なのす〟

3歳の頃、赤痢で入院した賢治(菅田将暉)をオトンの政次郎(役所広司)がつきっきりで看病したというエピソードも、跡継ぎの賢治に学問は不要という考えのジイジの喜助(田中泯)をオトンが説得して進学させたエピソードも実話で、宮沢賢治のオトンの目を通して、賢治をはじめとする家族を描いたってところが新鮮な伝記映画なんだけど…。

親バカなオトンとダメ息子賢治のほのぼのとしたファミリードラマだと思っていたら、家族を看取る別れのシーンや思い通りにいかないシーンが多くて結構重苦しい展開。ゴッホみたいに生前世間に認められなかった生涯だから仕方がないって言えばそうだけど、恋愛エピソードとかも欲しかったね。

映画には〝風の又三郎〟〝月夜のでんしんばしら〟〝注文の多い料理店〟〝銀河鉄道の夜〟〝雨ニモマケズ〟などの作品が出てきて興味深いし、もう一度読み返したくなる名作ばかりだけど、意味不明な言葉も多いので、絵本になっている作品がお勧めかな。

原作は、第158回(2017年下半期)直木賞を受賞した門井慶喜さんの同名の長編小説で、息子のために買ってきた宮沢賢治の学習漫画を読んだのがきっかけで書き始めたっていうのがいいね。父親目線で描いている構成になっているのはそういうことね。

視聴メモ:2024.04.08/042/図書館DVD
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