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薔薇の名前のutakoのネタバレレビュー・内容・結末

薔薇の名前(1986年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

難しいことは抜きで「暗号解読もの」として昔観たときは普通に楽しみました。が、100分de名著を観て再観賞。
作品の舞台である神聖ローマ帝国時代の宗教的背景はじめ、原作が書かれた経緯や著者ウンベルト・エーコの思惑や挑戦などを理解して観ると、多角的に解釈ができぐんぐん引き込まれました。
連続殺人事件+探偵もので時代設定的にも仄暗さのある作品なのですが、異端審問そもそもの意味とか、アリストテレスの影響力、哲学者・記号学者であるエーコがなぜミステリー小説を書くに至ったかなどを踏まえると、作中登場する迷宮書庫に入り込んだかのようにワクワク頭を働かせながら観ることができました。(アリストテレスは当時、相当型破りの人物で「詩学」第二部が実際に書かれていたらキリスト教にとって驚異だったに違いない…という名著解説面白かったな)
保守と革新の攻防とも観れますが、異文化流入で価値観が根底から覆るような時代…どうしようもできない激動の中に生きる人間の欲望やエゴ、気づきや希望にリアリティがあり面白みになっています。善悪で語れない含みがこの作品の良さですね。ラストも余韻があって私は好きです。
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