skm818

イヴの総てのskm818のレビュー・感想・評価

イヴの総て(1950年製作の映画)
3.7
数名の登場人物が場所を変えて喋り倒しているだけの会話劇で、途中かなり眠くなった。芸能界の話で女優が主人公なのに、舞台で演技している場面がほとんどない。マーゴのすごさもイヴのすごさも、女優としての実力は他の登場人物の言葉でしか語られない。ある意味すごいし、よくできている。
ベティ・デイヴィスが、わがままでえらそーだけど繊細でもあり可愛げのあるベテラン女優を魅力たっぷりに演じている。アン・バクスターも上手いなー。最初出てきた時の控えめな感じと最後の方の貫禄たっぷりなえらそーな感じの落差がすごい。半年間でここまで変わっちゃうっていう設定もすごいけど、おそらく最初の頃の清純さが演技なんだよなあ。
海千山千の批評家氏も抜かりなく調べている。イヴは息を吐くように嘘をついて周囲の恩人たちを手玉にとるわけだが、批評家氏もイヴに取り込まれたふりをして観察してるんだよな(この人は自分の筆の力で女優の卵の評判を踊らせるのが趣味なのだろう)。
あとの人らは、もともと女優志望だったらしい付き人さんはさすがだが(最初から嫌っている)、女性陣は割と早くからイヴの胡散臭さに気づいている。あまりにも気が利きすぎて利発に立ち回りすぎるのも考えものやね。ビルに勝手に電話したのは余計すぎたな。
一方でカレンの夫のロイドはいつまでもイヴをかばう。男って本当しょうがねえな。ビルも、マーゴを愛しているというのは本当のことなんだろうけど、でもこれ結局イヴのいいように踊らされてるんでしょ? プロポーズしてマーゴをいい気分にさせ自分から新作への出演を辞退させろっていう風に吹き込まれてるんだと思う。でなければあそこまでカレンに喋った内容と一致するかい。
逆になぜそこでカレンに喋ったんだろう。ビル作戦がうまくいかなかった時の保険か? 脅しをチラつかせることでカレンの反対を封じたということか? 車のエンコは別にカレンのせいじゃないですよね… それともカレンがイヴに乗せられ、やっちゃってるのか?
こういう周囲の恩人を踏み台にしてのし上がっていく話ってこの映画から今までの間にいくつ作られたんだろうなー。実際こういうイヴのような人間、現実に、芸能界じゃなくてもその辺にいるから恐ろしい。
skm818

skm818