Kachi

オットーという男のKachiのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
3.9
良作。

いずれ誰にでも訪れる老後生活を考えるヒントとなるような作品。最愛の妻に先立たれ、希死念慮を抱く主人公オットーが、地域の人々とのコミュニティを通じて徐々に再生していく物語。

ストーリー自体に奇を衒ったような点は無いが、不機嫌なトム・ハンクスと地域コミュニティのメンバーとのやりとりに温かみが感じられ、好感の持てる作品だった。

本作が秀逸なのは、オットーの人物造詣だと思う。ただの堅物という感じではなく、妻と出会い夫婦生活を共にすることで人生に彩りが生まれたことを深く感謝している様子と、その妻を失ったことによる喪失感との落差が、観ている側に痛切に伝わるようにできており、2時間という限られた時間にも関わらず、彼の人生をかなり理解できたような気になった。

D&MのことをDying Americaだなとシニカルに呟くシーンに、アメリカ社会においても、コミュニティの希薄化が進んでいることを示唆しているような気がしており、現代を風刺するような作品としても読み解けるところに面白さを感じられた。
オットーは、古き良きアメリカ人であると同時に、移民にも寛容な気持ちの良いアメリカ人でもある。トム・ハンクス出演作品をこれまで多く観てきたが、彼の良さが存分に活かされた作品だったと思う。
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