真っ黒こげ太郎

ヘル・ディセントの真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

ヘル・ディセント(2022年製作の映画)
4.2
撃ち続けろ―――

悲鳴ごと 喰われても―――

命尽きるまで―――




2017年のアフガニスタン。
英国空軍の女性大尉シンクレアは搭乗していた戦闘機をゲリラ達に撃墜されてしまう。
ゲリラに追われる中で、偶然見つけた元ソ連の地下施設に逃げ込むが、そこで得体のしれない謎の怪物を目覚めさせてしまう!!!

地下施設でゲリラが襲われている間になんとか逃げだすことができたシンクレア。
米軍の兵士達に保護されたシンクレアは怪物を見た事を伝えるが、米軍のお偉方は全く信用してくれなかった。

が、案の定怪物達は、地下施設を抜け出して兵士たちを襲う!!
シンクレアと米軍軍人達は協力して謎の怪物達に戦いを挑む!!!



地下施設から現れた謎の怪物と最前線の軍人達の死闘を描いたモンスター・パニック・アクション・ホラー。
「ドッグ・ソルジャー」「ドゥームズデイ」「ディセント」等のアクション映画やホラー映画でお馴染みのニール・マーシャル監督の最新作。


最近はご無沙汰気味で「ヘルボーイ(2019)」以来お久しぶりの監督作となった本作は謎の怪物と軍人達の死闘を激しいドンパチと激しい血みどろで描く「ドッグ・ソルジャー」を意識したバトル・アクション。
男勝りなヒロインの活躍やラストのオチは「ドゥームズデイ」を彷彿とさせるし(名前も同じ”シンクレア”)、地下で謎の不気味なクリーチャーが襲ってくる展開は「ディセント」を彷彿とさせます。
このように、今回はニール・マーシャルさんの過去作をオマージュしまくった原点回帰な内容となってます。
(しかし「ディセント」の監督の正式な新作なのに、関係ないパチモン臭い邦題を付けられているとはこれ如何に。)


内容もキャラクターの身の丈話を最低限でサッサと済ませて、後はひたすらドンパチと血みどろバトルに全振りという、実に「解っている」構成。
話の根幹は多少ゴチャついてはいるが、テンポの良さと激しい戦闘シーンとバイオレンスで勢い良く押していくタイプの映画なので気楽に楽しめます。
登場人物に関してもアレコレはあるが基本的に漢気満点&ポジティブシンキングな連中なので見ていて清々しくて純粋に応援できる。

全体的に低予算感はあるしアクション演出はベタではあるが、ゲリラや怪物相手の激しい銃撃戦や幾つか展開される火薬の爆破等は迫力アリ。
怪物の設定上、夜間や地下施設での戦闘が多いが、「ドッグ・ソルジャー」等で見られた様な「真っ暗すぎて何も見えない!」といった事が無いのも好感触。

怪物もCGではなくちゃんと着ぐるみスーツで描かれており、ぬめぬめした感じのキモグロな造形もナイス。
そしてやはりと言うか、「ドッグ・ソルジャー」の時みたいに怪物相手に斧や鈍器等で容赦なく殴り掛かる泥臭いドつき合いもしっかり描かれている。
(しかも皆いい勝負をしてました。さすがは軍人やな。w)

過去作に比べると全体的にアッサリした描写になったが、それでも顔の皮皮剥きや顎引き裂き、怪物の攻撃で顔面を貫通したり食いちぎられたりと、特殊メイクのゴア描写もちゃんと描かれてる。
粘液まみれな怪物を解剖する場面では内臓もデロリンと引っ張り出してるぞ。w


そんなこんなでB級ながら「顧客が見たいモノ」をしっかり見せてくれる作品ではあるが、何だかんだでこの手のジャンルは沢山作られてるからか、今となって全体的に既視感だらけな感じになってしまってるのは問題か。
怪物の造形も殆ど「バイオハザード」のリッカーそのまんまだし、ソ連生まれだったり後半で明らかになる真実とかも良くある話だし。

後、低予算故と展開の速さ故か全体的にアッサリ目に感じてしまうのも少々残念かな…。
まぁビデオスルーのアクションホラーとしては十分及第点に達しているけど、過去作と比べるとこじんまりとしたスケールに収まってしまったというべきか。
(そういえば後半に出てきたアレ、マジでぽっと出だったな…。)


ニール・マーシャル監督にしては全体的に手堅く纏まった感はあるが、それでもパワフルで激しいドンパチやキモグロなクリーチャーによるグロゴア描写等、この手のドンパチ&血みどろなB級アクションホラーとしては景気良く頭カラッポにして楽しめる佳作ですので、レンタルまとめ借りのお供にでも是非どうぞ。