チェックメイト

Rodeo ロデオのチェックメイトのレビュー・感想・評価

Rodeo ロデオ(2022年製作の映画)
2.5
期待したほど心動かされなかった。

バックミラー等の保安部品のないモトクロッサーでクローズしたたまり場だけで騒ぐのは問題ないのだがヘルメットなしで公道をも疾走する。
その姿がカッコいいという描き方が一面的。オートバイに乗る一般人から見るとただの暴走族とおんなじ。
監督は実際のそういう集団を知り映画化したそうだがかれらのどこに共感したんだろう。共感せずとも主人公ジュリアの居場所として設定か。
というのもジュリアが接近する族はウィリー走行に夢中になりハイになるがそのために技術を追求するという真摯さがある訳でもない。ただの窃盗団。

いわゆるホモソーシャルな集団にジェンダーレスなはみ出し者としてジュリアが居場所を求めていくというような図式に捉えられるがそれ以前にジュリアが仲間に受け入れられたくて当たり前のように犯罪に手を染める。一抹の躊躇もない。乱暴過ぎて雑。

犯罪を生業とするギャングと安易に同じ側に立っていかにもノンセクシュアリティーな立場で抗うのをアンチヒーローとするのはちょっと違うかなと思う。

ジュリアは単にバイク疾走欲を最優先して刹那的で破滅型な困ったちゃんにしか見えない。犯罪集団であれ彼女が自分の意志で参加してるならルールを守れと言いたいがただ突っ張るだけの彼女には独立心が強いというよりコミュ力不足か対人嫌悪しか感じない。
群れを好まずさりとて自己の生きる道にこだわっているのかといえばそうでもなくただただ暴力的に映る。
彼女に好意的な人間にも敵意むき出しなのはなんなのだろう。
孤独から来る人間不信?ホモソーシャル社会への嫌悪?
生い立ち的家庭的背景は描かれず彼女の人物造形が一面的で他人に対して終始侮蔑的なのが何に起因するのかわからず理解に苦しむ。
ジェンダーに無関係な犯罪を犯して恥じない姿は、否定的意味でなく発達障害(知的障害ではなく脳機能の発達アンバランスで環境との不適合が生じコミュ力・認知力などに影響及ぼすので本人が気づかない大人も多い)の側面があって周りとの距離が縮められないような感さえしてしまう。そうであれば見方も変わる。
そういうパーソナルな人格に配慮しないで見てると結末が自業自得にしか感じられないような印象しか持てないのが残念なのだ。
ヒリヒリした感受性をもてあますさまを巧みに演じてはいるのだが人間ドラマとして見るにはなんだかなぁという気がする。
ジュリアのバイクへの執着も結局何から解放されたいのかその高揚感らしきものが他人からバイクかっぱらってイエーとしか見えず、なんらかの自己主張以前の話し。道徳的であれなんてさらさら思わないが犯罪者を描いても見るに耐えるのはその背景なり家族の機微なりを丁寧に描いて普遍的だからだと思う。ここではジュリアのパーソナリティが重要だと思うんだけれどがそれが腑に落ちなかった。
チェックメイト

チェックメイト