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aftersun/アフターサンのチェックメイトのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.2
5月から封切られて10月を越えまだ上映中。異例の長さ。
リピーターがけっこういるってことなのか。

初回鑑賞時娘が父との思い出を懐かしんでるだけの映画だと思って漫然と見てたらなんだかよくわからなくて、ん?お父さんどうかした?今は?って感じでモヤモヤ引っかかってすぐ2回目見た。

随分見逃してた。
ソフィーの現在の孤独感。
仲良し父娘の昔の記憶。
楽しい旅行も微妙にずれているお互いの行動。仲良しだけど歌もダンスも一緒にやらない。
明るいけどどこか不安な父カラム。
ひとりむせび泣く父。
何度となく試みる絶望。
愛する娘を部屋の外に忘れて寝てしまう。
ストロボライトの中では一緒にダンス。
バックに流れる「Under Pressure」の歌詞。
父が最後に去って行くドアの向こう。
ああそういうことかと理解。
映画では必ずしも明示はされないが悲しい結末が見えた。

監督は自分の体験がもとになっていると語っているのを雑誌記事で読んだ。悲しすぎる。

多くを語らずとも微妙なニュアンスが表現されている。
思い出して何度でも反芻したくなるけれど決して美しいばかりでもない思い出。
それらが巧みなフレーミングや画面の色彩に感じられる。

父親役もソフィー役二人とも単純な中に複雑さが垣間見えるさりげない表情が秀逸だ。
いつもどこか物悲しい余韻。
もう一度ひとつひとつのシーンを噛みしめたくて三回目見た。 今年見た映画で三回見たのはこれだけ。
心の琴線に触れるというのだろうかいわゆる感動というのとは違う感情が湧いた。
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