チェックメイト

ダンテのチェックメイトのレビュー・感想・評価

ダンテ(2022年製作の映画)
3.6
第36回東京国際映画祭(2023)公式出品作。
"パッセージ"、"真昼の女"に続き3作目。
偉大だが著作が馴染み薄いため人柄なぞ知りもしなかったがその生涯がわかりやすく音楽も効果的で自然も美しくダンテのヒストリーのスタンダードになるような印象の作品。

上映後のトークイベントでは監督がかなり高齢で登壇も大変そうなのに積極的に説明して思いの丈を語っていた。
監督が言うにはイタリアではダンテは人気がないが監督にとっては本作は畢生の作品だとのこと。なので自分自身もこの場に来たのだとのこと。

確かに現代人には13世紀の文学はイタリアでなくても日本でも同じだろう。
一般人にその生涯がどれほどの意味をもつかちょっと疑問だ。
しかしあの大詩人ダンテを人間的に描いて政治に翻弄されたり追放されたりベアトリーチェへの思いなどなかなか見やすくはなっていた。

ただ少し残念なのは詩人としての生活というかどのように詩作へ傾注していったのかがわかりにくかった。そういう描写はあるがベアトリーチェの死が契機で詩作にのめり込んだのかどうなのか。
監督自身ダンテは謎の多い人物だと説明されていたのでならば監督の思いで想像でフィクションを構築してもいいとは思うがあまりそれがなく詩人としての人物像が見えなかった。
勝手な解釈で脚色はしたくないのかもしれない。
でも伝記としてはよくできていると思う。
同時代の理解者とされるボッカチオの苦労のある道行きを通して過去のダンテをラップさせてうまく語っていた。
にしてもタイトルは"ダンテ"である。それで見ようとする人がどれだけいるか難しい。
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