スカポンタンバイク

ゴジラ-1.0のスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.5
山崎貴をそんな系統立てて追ってるわけでもないが、彼の映画の中では多分一番面白かった。
ゴジラが暴れる姿というと、ハリウッド製の陰謀論ゴジラで十分見せられてきた気もしていたが、ここまで街の崩壊を見る事ができたのは意外と初かもしれない。特に熱線の威力を遅れてくる突風で表現してくるのにはビビった。
ただ、物足りなさもあり、街が崩壊してるわりには、あんまり人が死んでる感じがしない。あと、単純にゴジラが暴れてる時間がそんなに長くない。スーサイド・スクワットばりに悪趣味に人を擦り殺してほしいまで言わないまでも、決定的な大虐殺が行われたというのをシーンで見せてくれないと実感としては物足りない。特に、あれだけ街を破壊しておいて、死体が全然転がってないというのは納得いかない。
また、今回は人間ドラマに力を入れてるという事で、神木隆之介を中心とした、というか神木隆之介の戦後生き残ってしまった特攻兵の葛藤という重いキャラクターとそのリベンジが設定されている。ただ、設定だけ聞くと重いのだが、これまた描写が緩く、決定的にキツいシーンというのがない。ゴジラに襲われる恐怖というのはアトラクション的に存在するのだが、戦争体験の恐怖は本作では描かれない。故に、言葉でいくら「辛い」とか「戦争に行ってないってのは幸せなこと」とか言われても、それに対応する地獄が描かれていないから、いまいち沁みてこない。

観終わってからとにかく思うのは、やろうとしてる事の意気込みと威勢はいいのだが、いちいち痒い所に手が届いてくれない映画だったなぁという事。こっちを殺しにくる瞬間ってのがどうも足りない。まぁ、らしいっちゃらしいのですが、セリフのいちいち過剰な接待をもっと減らして、こっちにも注力してほしいなぁと思う。
このなんとも緩い感じはローランド・エメリッヒ監督の映画を観た後の感じにも近いなぁとか思った。