「重そう」という理由だけで避けてきた是枝作品。しかし今回は坂元裕二が脚本だと知り、重い腰を上げ、いざ初是枝へ。
重かった。胸に残る、心地よい重さ。
思ったのは「どれがテーマなのか」ということ。とある事件にまつわる物語が、登場人物各々の視点で語られるが、それぞれの視点で作品のテーマが変わってくるのだ。
さまざまなテーマが混在する中、ちゃんと整理整頓されているのはすごい。そして、真実の悪が定まらないまま、作品は終わりを迎える。
全員が怪物であり、怪物かどうかなんて視点を変えれば変わってくる。それなら、真実を提示したところで何にもならないし、根本的な問題は解決しない。この映画のテーマを一つに絞るなら、こういうことではないだろうか。
個人的にはラストシーンが好きすぎる。一瞬視界が真っ白に包まれ、その先に見えてくる風景。映像、演技、音楽、全てが美しく、坂本龍一の旋律が耳から離れない。
あのラストシーンを見れただけでも、重い腰を上げてよかったと思った。
