まる

怪物のまるのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

良い邦画を観たと思った。
万引き家族もそうだけど、是枝監督は児童虐待を現代社会の中でとても問題視しているように思う。Motherとかを思うと、坂本裕二さんも同じくなのかもしれない。
家庭環境の苦しみを、学校ではけ口にする話なのかと思ったら、星川くんが良い子すぎて、もはや苦しかった。
現代は、昔よりはLGBTという考え方が浸透しているのだと思うけれど、親の、君が結婚するまで頑張るね、という言葉さえも、当事者にとっては苦しいのかもしれない。親が好きだからこそ、言えないことがあるのかもしれない。
大人になれば、そんなこともきっと受け入れて日々を誤魔化すことに慣れてしまうことができるかもしれないけれど、多感な時期に自分がマイノリティであることを自覚してしまうのは、きっと孤独で苦しいことなんだと思う。
怪物は登場人物の中では星川くんパパ中村獅童だと思うけど、きっと中村獅童の会社の中にはもっとすごい怪物がいるのではなかろうか、と思う。それか中村獅童の親とか。
少年2人の間には幸福な時間が流れていて、くっついたり離れたりするけど、些細な出来事では心が離れることはない。そんな2人を見て、思春期の友達ってこうだったかもな、と思った。成人すると、一度心が離れるともう戻ることはない関係が多くて、眩しくて懐かしくて、少し羨ましくもなった。
どこかで2人の関係に亀裂が走るのではないか、とヒヤヒヤしていたから、そうでなくてよかった。
ホリ先生がいろいろとばっちりすぎて、少し可哀想だった。出来事に対してちゃんと話を聞かないで決めつける節はあるけど、そんな悪い人ではない。でもあらゆるホリ先生に対するアクションは少年たちなりのSOSだったのかもしれない。親に言っても他人を救えるわけではない、でも何かしら伝わって何かしら変わってほしい、そんなミナトの想いがあらゆる事情をホリ先生にすり替えて話してしまったのかと思う。
校長先生の最後の言葉に胸を打たれた。誰かしか味わえないものを幸せというのではなく、誰でも手にすることができるものを幸せと呼ぶ。本当はそうではないと感じることは山ほどあるけれど、誰でも手にすることができることが幸せである世界に生きてみたいと思わせられた。
序盤、校長先生らが冷たかったのは、先生が悪くないことを知っていたからだろうか。学校教員は大変そうだ。
最後、笑い合って草原を走り抜ける2人がそれはそれは眩しくて泣いた。現実には苦しみも変わらず横たわっている。それでも2人でいるその瞬間だけは、楽しくて夢中でいられて幸せで、その瞬間だけは嘘ではなく本当に幸せで、自分ごとではないのに感情がぐわんぐわん揺れた。どうか2人が、星川くんが幸せになりますように。苦しいニュースが多いからこそ、フィクションとは思えなくて、悲しいことが減れば良いと思う。常々思ってる。
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