てっちゃん

哀れなるものたちのてっちゃんのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
待ちに待ったヨルゴス・ランティモスさん(すらすら言えるようになったので嬉しくてフルで言ってしまうことありますよね?)!
過去の作品は視聴可能なものは制覇しておりますが、劇場に同行してくれる方はお初ヨルゴスさんだったこともあり、”聖なる鹿殺し”を事前に鑑賞し、ヨルゴス慣れをしておこうと思ったのです。

が慣れるということはなく、同行してくれた方は、ん?お?状態で、私もおお、、としか言えなかったのです。
さ、予習できたし劇場向かいますよ!ということで劇場へ向かいました。

2週間ほど上映開始から経ったにも関わらず、休日夕方の回で6割くらいの客入り。
さすがは話題作ですね。

本作についてあれこれ書いていく前に。
原作小説があるとのことで(原作未読でございます)、劇場で新装版を購入しましたが(絶対に過去の表紙の方がいいです)、この駄文を書く前に読んでやるぞと意気込んでいたのに、案の定読むことはできずの有様。

なので原作読んだ後だと、本作に対する捉え方は変わる(原作ファンからは本作に対し不満もあるよう)のだろうけど、とりあえずの現状で思ったことを。

〇ヨルゴスさん、ますますファンになりましたよ!

もともと推しであった監督さんですが、ますます大好きになりましたね!
過去作と比べても、製作予算が莫大に上がったであろう本作。
ヨルゴスさんの頭の中の世界観がより視覚的に楽しめるようになり、物語の重厚感が増しました。

〇美術とかすごすぎ!

本作を観てすぐに飛び込んでくるのが美術の素晴らしさ。
インテリアはもちろんなのだけど、背景にある建築の美しさ、街並みの美しさ、さらには衣装でしょう。
この衣装が非常に素晴らしいのです。

独創的な衣装であるのは明白ですが、人物の心情なり背景に呼応するように衣装が変わっていきます。
ベラの衣装に注目すると、最初は男性に好まれそうな服装ないしは幼児みたいな衣装であるのが、段々と知識を学び自我を取戻していく過程での衣装に注目すると面白いですね。

本作の設定時代とはそぐわない衣装であるところ、パンツスタイルであるところ、振袖ちょうちん?が大きくなっていくところ!、などなど衣装に本当にこだわっているのが分かります。

〇物語の独創的な感じよ。それを映像化でみせるあたりよ。

これは原作を完読していないのでなんとも言えないけど、間違いなく物語の設定と方向性、創造力は間違いなく好みなんです。
そもそものベラ誕生からして、ぞくぞくしましたね。

あとは摩訶不思議な世界観をよくぞここまで映像化してくれた!!
キメラアント的なかわいいけど奇妙な動物や、ゴドウィンの口から出る泡玉”ぽっ”としたら”パンっ!”と割れるやつ、奇天烈ギミックな機械たち(馬車?かと思ったら自動車のやつが最高に好き)、色彩の豊かさ、いちいち画になる映像群、、素晴らしいですね。

”命”が宿る(この命というものが本作ではとても大きなテーマになっていますよね)瞬間に、モノクロからカラーへと変わります。

本作における命とはなんなのでしょうか。
私は己を見つける感じる瞬間だと思いました。
もっと言えば、完全プライバシー空間みたいな、他人に侵されない絶対領域みたいなそんな感じのやつ。
本作はそれを、”性行為・性的な表現”でみせていましたね。

〇登場人物たちが魅力ありすぎ。役者さんすごすぎ。

これは誰もが感じることではないでしょうか。
エマ・ストーンさんすごすぎ。
マーク・ラファロさん笑わしてもらった。
ウィレム・デフォーさん貫禄すごい。
でもお気に入りは娼館でのタトゥーすごいばあさん。あの人は強烈すぎる。

〇これはフェミニズム映画なのか?

海外でもこれは論争になっているそうです。
私自身もなにか鑑賞後に引っかかるものがありました。
しかし、その正体が分からずにいてもやもやしていたのですが、町山智弘さんの解説動画を見て、ガーディアン紙が本作がフェミニズム映画なのかを専門家、知識人らに意見を聞いてみたとの情報が。

その中で私のもやもやの正体が分かりましたので、その一部の紹介を(自分流に解釈したやつ)。

「手足を縛られてのセックスでどこがフェミニズムなんだ」「前戯のないセックスのどこがフェミニズムなのだ」「製作陣は(エマ・ストーンさんが製作に関わっていたとはいえ)男たちばかりではないか」

なるほど、、とすとんときました。所詮は男性が描いた女性なんですね。
とはいえ、ここまで論争を引き起こすことは、議論を活発化しているということで良いことだと思います。

などなど長々と書いてきましたが、音楽も素晴らしいし、パンフも凝った内容になっており(役者さんインタビューが豊富なのが良かったが、もう少し背景的な内容が欲しかった)、非常に充実した作品でありました。
ヨルゴスさんのステージをさらに上げた作品であったと思いました。
てっちゃん

てっちゃん