けんたろう

せかいのおきくのけんたろうのレビュー・感想・評価

せかいのおきく(2023年製作の映画)
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せかいのおきく


オヽプニング・クレジツトで既に心を奪はれた。ユウロスペエスのスクリインマスク稼働も相俟ち、始まりからして心昂ぶる。
加へて、白黒で且つスタンダアドの映像美。構図もタイミングも何から何まで好い。其の頗る美しきカツトの聯続に、もうおいらウキウキである。
極め付けは、主演黒木華の美しさ。最早や堪らないの一言に尽く。

題材及びキヤラクタアも最高である。
ケガレの観念を持ちたる日本人に依りて職業差別が罷り通りてゐた時代──今もか──。差別され軽蔑され、惨め極まりない社会の底辺で屈辱を浴びつゞくる汚穢屋の二人。辛き境遇でも明るく生きつゞくる其の様には、此れ亦た心を奪はれる。
洒落た台詞の江戸つ子も格好よし。兎角、登場したる人物の誰れも彼れもが魅力的。凄惨なる出来事が起きても、決して敗けぬ人々の生き様が有り。優しく、気高く。果たして生活が在り。愉快爽快。然し悲しく。処が微笑まし。

成るほど物語りは劇的とは云ひがたい。ドラマは殆ど無いと云うても過言ではあるまい。然し其れで好い! 果たして、生活が此処に在らん!
詰まるところ此れは、出来事を追ふ映画などではない。人々を追ふ映画である。
「せかいのおきく」
此れほどまでのタイトル、一体何処に在らう。