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君たちはどう生きるかのmingoのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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「君たちはなぜ公開前の作品のレビューを書くのか。」という認識でしか無かった本作だが嘴の下に眼がある“鳥”のことが気になって仕方がなかった…何を書いてもネタバレになりそうだから物語については一応ネタバレしていないと最初に書いておく。

「宣伝しない」ことと「ビジュアルを制限する」こと。これらのことによってSNSを見事に誘導し「ネタバレをする=悪」という意志さえも見え隠れするが、”観た人がちゃんと楽しめる”ようにコントロールされていることがスタジオジブリの凄いところだと再認識。“悪”は言い過ぎかもしれないけど、シンプルにアニメを楽しんでもらうためのシカケ(作品ブランディング)と社会を巻き込んだ現代アニメ(アート、サブカル)の楽しみ方の提案。つまりアートがゴミみたいな土台の日本で展開できる唯一無二の宣伝に感服。

風立ちぬの”クリエイティブ人生のラスト感”から早10年の年月が経過し、新作「君たちはどう生きるか」公開初日。鑑賞結果…毎日毎日めちゃくちゃコンプラとかコンプラとか生きづらい時代だけどまじで“君たちはどう生きるか?!?!!”に尽きる。何も前情報入れずに観てください全人類。

ハヤオの長年のクリエイティブの集大成は前作に注がれているのは人類周知の事実だけど、本作の映画のメッセージはタイトルまんまストレートに後年に紡いでいく“最後の意志”としてビシバシ感じられる。具体的なメッセージわからんて感想を散見するがDon't think,feelだよ。意味を(求めるのは人間だから分かるけど)求め出したら作品に対してキリがない。きみは分からないのか、このあついエネルギーを。早い段階から涙腺決壊…(本当に最後なんだな…)本田雄が作画監督になった流れの記事を読むと、まんま若い世代とバチバチにバトルを挑むハヤオのありのままのバトルが描かれているので、習うより慣れろじゃないけどドロドロした感情の清々しさを私を受け取った。

序盤から感じられる従来の50.60年代の邦画が持つパワーや小津安二郎に呼応したかのような空気感も忘れられない。何より時代を駆け抜けた史上最高のアニメ人から“希望に溢れながら儚く脆い人生”を選択しがちな現代の若者へ向けたあついあつい生き様が胸をうつ。遺言は哀しいものなんかじゃなくて前を向くエネルギーに変換すべきもの。

個人的には昨年から“死”や“人生の終幕”を考える機会があり、身近な人や大切な人が居なくなるときのことをどうしたって考える年齢になってきたのもあってか、良し悪しにかかわらず気になる作家や作品はこの目でしっかり目に焼き付けることを生活の糧に生きていた。これからも1日5本映画館で観るし展示は1日3つはしごしたりするし、名画座通いをはじめて10年目にして映画からは常に“気づき”ばかりを得る。
総じて「良い悪い」「面白い面白くない」で語れるはずもなく、このハヤオの豊かな悠然なファンタジー/フィクションを超えたアニメーションの世界に浸らせてくれて『宮﨑駿、ありがとう。』これに尽きる。
小学校の頃親父と3回も観に行ったもののけ姫…誰しもが持ち合わせているであろうじぶんとジブリの思い出。人は必ず死ぬけども作品は絶対に死なない。スタジオジブリと、それを支える凄いアニメスタジオや映画に関わるすべての人に感謝したい。最低あと一回は劇場に足を運びたい。ぼくはどう生きようかな
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