H列7番目

君たちはどう生きるかのH列7番目のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

魅せられて入り込み、入り浸り、自ら創り上げた世界でぎりぎりの均衡を探し当てているおじいさん。
まるで宮崎駿(もしくは彼の如く生きた誰か)が次世代に、またはさらに後の世代に遺した言葉のようで、終始どこか寂しい気持ちで観てしまった。

おじいさんが慎重に組み立てている"バランスとれてるいー世界"の中で、ここは地獄の海だと言いながら飢えゆくペリカンたち。彼らに食われる新しい生命たち。精子と思しきわらわらたちが、魚の腸を食べることで飛ぶ。擬人化して石の中を埋め尽くす大量のインコ。
朽ちて、生まれて、生きて、果てる、その繰り返し。
産むのは、おかあさん。
おかあさんがいなくなったら、他の誰かがおかあさんになることだってある。
それを受け入れるのも自分。
誰かが作った良い世界なんてない。

小さい頃に初めてラピュタや千と千尋を観た時のような、細かいことはよくわからなくても、ああ、少し大人になったんだな、この子も私も。ってそんな感覚で観ることができて、
あの時子どもだった私たちに、その追体験を贈ってくれたような、そんな気すらする。
どう考えるかも私たちの自由で、どう生きるかだって、決めるのは自分だけで。

眞人、コクリコ坂の風間さんを彷彿とさせる真っ直ぐな瞳と背中。礼儀正しい返事。言葉が少なくても、些細な眉の動きと瞳の揺れ動きから伝わる感情。こんな、こんな主人公、好きしかないだろう。

原石のように光る石のトンネルは耳をすませばを思い出させるし、わらわらは木霊たちのようだし、なんだか今までのジブリ作品のメッセージをかき集めて再攪拌して詰め込んだらこうなったよ、みたいに思えるシーンもちらほら。

一方でついニヤッとしてしまうシーンも多く、コミカルな作画は今までのジブリ作品切ってでは。(何らかを風刺してるであろうインコ、顔崩壊してて結構笑う)

積み木を継いでくれ、のくだりで、インコ大王がじりじり付いてきて横取りした上に色々ぶっ壊し、呆気なく(本当にあっっっけなく)世界が崩れていくのは、なんか現実でよく見る構図、こういう人いるよな、とじわじわきた。

まとまらない感想が、ありのまま。
私はどう生きよう。
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