映画大好きザウルスくん

君たちはどう生きるかの映画大好きザウルスくんのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8
2023年劇場鑑賞9作目。
グランドシネマサンシャインのBESTIAで鑑賞!

生命のダイナミズムを常に表現してきた天才・宮崎駿が82歳になった今、自らの死を見据えて自分なりの生死観をこれでもかと表現した作品…というふうに僕は捉えました。

この作品は宮崎駿という人物をどれだけ知っているかによってだいぶ印象が変わってくる作品だと思います。僕は宮崎映画をそこまで深掘りして観てきた訳ではなく人並みに観てきた程度なのですが、宮崎駿に関連したドキュメンタリーやインタビューはかなり見てきたつもりです。それらの映像で宮崎駿は「悩み苦しむことこそが生きるということなのだ」と常に主張していました。不機嫌でいたい、孤独でいたい、もっと早く死ぬべきなのに長く生きてしまっている…このような発言も聞いてきましたが、恐らく「太く短く」生きたかった生涯が「太く長く」になっていることにかなり悩んでいたのではないでしょうか。

そんな宮崎駿が82歳になって新作を発表!となればこれまでの発言を知っている自分としてはジブリ作品として期待するとかではなく、あの天才・宮崎駿が現在どのような気持ちで生きているのかを知る意味でとても興味深かったのです。

ディティールには触れませんが実際観てみると、随所に過去の宮崎映画のテイストが取り入れられた「宮崎駿ユニバース」的な絵作りながらも、そこにはこれまでになくハッキリと血・死・性・生が生々しく描写されていました。そしてこの世のルールと言うか、「輪廻転生」と言うか、そういった哲学的・宗教的価値観を宮崎駿が包み隠さず全てさらけ出したような、そんな作品に仕上がっていました。

やはり予想通り死の匂いが濃厚になってきたなと思いつつも「やっぱ宮崎駿のアニメーションはすげー!」「独特な世界観が最高!」「よく分からないけど勢いで持ってかれた!」「久しぶりにジブリを観れた気がした!」と言った感じで、作品としてもちゃんと楽しめました。まだまだ謎は多いですがすぐに考察とかは読まずに、1年くらいほったらかしにしてみてもいいかもしれないなぁ…そんな気分です。少し長めに余韻を味わっていたい1作でした🙌