ドント

マダム・ウェブのドントのレビュー・感想・評価

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
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 2024年。あの~何かね、そんなに悪くはないんですよ。うん。04年のアメリカ、救命士として働くキャシーは活動中に溺れかけたのを契機に未来予知/巻き戻しのような能力に覚醒、電車の中で3人の少女が殺されるビジョンを得て居ても立ってもいられず少女らを引っぱり出すが、クモっぽいムーブをする男に追われ続ける。この運命には、彼女の出生が深く関わっていた……
 新機軸、といった感じのマーベル映画である。スーパーヒーローと言ったら怪力とかメカとか念動力とかありあまる富とか光速とか、超すごい力でもって敵をしばき倒すわけであるが、本作の主人公は予知能力と、救命士なので体力と根性がちょっとあるだけ。そういう比較的非力なパーソンが、やっぱほっとけねぇな! と善の心と機転とで頑張るというお話なのだ。
 前半はよかったと思う。謎の能力がいきなり発動する気味の悪さ、主人公の不安感、見えたものを無視した結果悲劇が起き、そこから思い直して、出会いを果たす……。多少強引な流れではあったけれどもホラそこは、スタンド使いは引かれ合うみたいなアレで呑み込める。少女3人は年相応にあほで困ったさんなのだけど、それぞれに事情を抱えていたりする。少女とお姉さんの逃避行、よいと思う。
 ところがまぁ、後半からかなぁ。強引な流れが加速しちゃって、さらに古典的な英雄誕生譚のスジも挿入しなきゃいけなくなって、さらに誕生譚も入れたんだから覚醒せにゃならんぜ、ハイッ、ってなもんで、いろんなことが腕っぷしにまかせてこじ入れられる。
 しかし上述の「予知能力だけがある普通の女性が頑張る」という基礎のラインはキープされており、そこに無理くり「よっしゃ、ペルー行くわ」とか世俗化しちゃった先住民とか未知の母との和解(会ったことないのに)とか幽体離脱とかがギューッされていくため、ちょっと豪腕の許容範囲を越えた。「えっ?」「ええっ?」と5回くらい思った。
 つまり、面白い試みであるが、全体にガタついているのだ。エンドロール中はずっと「これどうやったらちゃんとした建物になったかな……」と考え続けていた。しかしどう考えても一回NYからペルーには行かなくちゃならないので、かなり難しいことがわかった。いやペルーの件をさっぴいても、全体の流れが勘定合わせのようになっており、一方で堂々と勘定を無視したりもしているので、どうにも落ち着かぬ映画となったのである。
 ただまぁ、やりたかったことは伝わってくるし、退屈はしなかった。母子の話でありシスターフッドの物語なので、敵の小物感やスケールのこぢんまりさもこれはこれでアリであろう。ただこの規模で2時間弱は長いと思う。ちなみに嫌な奴をやらせたら天下一品、アダム・スコットがいい人役だった上に役名でビックリした。あとアレですね、たぶん足りない予算を出してくれたのであろうペプシさんありがとう、と言いたい。叩くほどではないが、褒めるにはスットコドッコイが過ぎる、そういう映画でした。
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