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瞳をとじてのBATIのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.2
ビクトル・エリセ、31年振りに撮ったのがこれってこの歳にして新味を出していることに驚くのと、意外と現代の機材で撮っていると思ったらそれは現代のパートだからで、劇内劇についてはフィルム(のタッチっぽくしてるだけかもしれないが)で我々が慣れ親しんだエリセとショットをキメてくる。その辺りに職人性を強く感じると同時に「映画とはいかに語るかということ」を思い知らされる。エリセの中に物語のための物語も結論や共感なんかは眼中にない。そこにあるもこを見て(あるいは見えていないものを見て)感じること、それが映画なのだと。映画とは記録であり記憶であり、見返した時に呼び起こすのはその時の記憶というよりも感情なのだ。そしてそれはいつか雨の中の涙の如く消えていく。人も人の記憶も。生きていても死んでいるように老いていく。だがそれでも見えるもの語るべきものがあるのだと。私は受け取った。160分みていても長いとは思ったが終盤にたどり着くと必要な長さだったんだなと思える。あと私小説性は少なからずあるのだと思うけど、これで生涯ラストって感じもしないまだまだやるぞという生気ある作品に思った。
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