ジェイコブ

インフィニティ・プールのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

売れない作家のジェームズとその妻で資産家のエムは、スランプから脱却するという名目で、高級リゾート地に訪れていた。バカンスを楽しむエムと対照的に、イマイチ乗り気になれていないジェームズは、自身の作品のファンと言うバウアー夫妻と知り合い、意気投合する。ジェームズは、妖艶な魅力を放つガビ・バウアーに心を惹かれ、彼女に誘われるまま、夫婦揃って、リゾート地の外へとドライブに出かける。しかしその帰り道、ジェームズは不注意から島民を轢き殺し、警察に捕まってしまう。不安にかられるジェームズの元に、刑事が提案してきたのは、この国独自のルールであるクローンによる身代わり制度であった……。
巨匠デイヴィッド・クローネンバーグの息子として知られるブランドン・クローネンバーグ監督第3作。主演はゴジラVSコングのアレクサンダー・スカルスガルド、助演としてA24のパールやXの怪演で話題を呼んだミア・ゴスが出演している。ミア・ゴスが好きな人であれば、本作でも彼女の狂気的な演技が見られるため、それを堪能する意味でも観て損はないだろう。
本作は、遠い異国の地では法は皆無に等しく、観光客は金さえあればクローンを作って身代わりにできるので、人を殺しても裁かれることはないと、倫理もクソもないような話。ルールのもとでは、人はいくらでも残酷になれるという意味では「パージ」や「エス」に通じる胸糞さがあり、遠い異国の地で巻き起こる狂気的な非日常という意味では「ホステル」などのイーライ・ロス作品を彷彿とさせる内容。ただ、本作はとにかくジェームズの甲斐性なしさが悪目立ちしてしまっているのが残念すぎる。その気になればいつでも抜け出すことのできた地獄に自ら進んで首を突っ込んでおきながら、ある時フッと我に返り、自分だけ逃げようなんて虫が良すぎるにも程があるだろう。バウアー夫妻をはじめとした金持ち連中もいけ好かないが、それ以上にジェームズに苛ついてしまう。
麻薬によるトリップ表現や、音楽の使い方などは印象的だったが、結局約120分鑑賞しても前述の作品ほどのインパクトや心に残るシーンもなかった。これだったら、90分くらいにまとめても良かったのでは? とすら思えた。
あとは、この作品をホラーとして位置づけるのは疑問に思える……。