ジェイコブ

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

戦後の日本。帰還兵で銀行勤めの水木は、政財界で一大勢力を築いた龍賀一族の持つ秘薬「M」の秘密を探るため、彼らの暮らす哭倉村を訪れる。余所者が歓迎されない閉鎖的な村で、水木は龍賀一族の令嬢さよと知り合う。先代の当主時貞の遺言が読み上げられる中、内容に不満を持つ一族の憎悪が屋敷内を漂い始める。そんな中、次期当主に指名された嫡男の時麿が惨殺されているのが見つかる。殺害の犯人として囚われたのは、怪しげな風貌の片目隠しの男(後の目玉の親父)。水木はその場で処刑されそうになった男を助けた事で男の監視を任される。男の目的を聞き出そうとする水木に、男は「妻を探している」と話す……。
水木しげる原作の人気アニメの劇場版であり、主人公の鬼太郎が誕生する前の前日譚。アニメを見ていた身としては、万人受けに作られたアニメの雰囲気で描いていくのかと思っていたら、想像よりもグロありだったので驚いた。
前半は絶大な力を持った当主の死後、その一族が次々と死んでいく「犬神家の一族」のような展開や、「八つ墓村」のように曰く付きの閉鎖的な村で巻き起こる怪異など、横溝正史が好きな人ならばハマりそうな血みどろの展開となっている。後半は流行りを意識したのか妖術妖怪怨霊入り混じった正に呪い合いの展開。鬼太郎はというと、猫娘と一緒に序盤と終盤にちょっとだけ登場。ストーリーはダークかつハートフルなもので満足度は高かった。また、クライマックスのこんな腐った世界、全部滅ぼしてやる展開は「SIREN」を彷彿とさせるものがあり、個人的に熱かった。
ただ、もっと遺産を巡る一族の醜い争いを見たかった気持ちがあり、後半はもはや遺産争いはどこへやらなのが残念な点であり、そこで金に目がくらんだねずみ男(小僧)の立ち回りも見られていないのも惜しい。また残忍な描写をキツくすれば万人受けはしなくなるのは百も承知だが、それでも殺しの場面は真正面から描いて振り切ってほしかった。
しかし上記の点を含めても作品としての完成度は非常に高かった。今後是非、墓場鬼太郎も劇場版でやってみてほしい。