ジェイコブ

シアター・キャンプのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

シアター・キャンプ(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

これまで多くの才能ある子供達を輩出したアメリカ郊外にある「シアターキャンプ」。創設者にしてカリスマ的指導者のジェーンは、子供達の劇を鑑賞中に演出のストロボで発作を起こし、昏睡状態に陥ってしまう。これまで資金繰りに頭を悩ませていたキャンプの経営は、ジェーンが倒れた事により危機的状況を迎え、キャンプの土地を狙う大企業の魔の手も迫っていた。そんな中「ビジネス開発演出家」を自称するジェーンの息子トロイは、母親の意思を継ぎ、キャンプの経営建て直しを図る。トロイのアイデアはどれも空回りばかりで、しまいにはキャンプの土地までも大企業に売り渡してしまう。同じ頃、結束の強かったシアターキャンプ内にも不協和音が流れ始め……。
アメリカで本当にありそうな演劇をテーマにしたサマーキャンプに密着するモキュメンタリー。監督主演を務めるのは、「ブックスマート」のモリー・ゴードン。演劇に人生をかけるシアターキャンプの面々に対して、ビジネス視点で物事を考える演劇素人のトロイ。これまでジェーンというカリスマがいた事でまとまっていた組織が、彼女が倒れた事でその結束が揺らいでしまい、しいては買収の危機にも瀕してしまう。危機を招いた張本人であるトロイは、シアターキャンプにとって異物そのものであるが、今までにない視点を持った彼が混じった事によってグレンを主演に迎えたショーを実現することができた。まあだからといって、あの間抜けぶりにイラッとさせられるのは変わりないが笑
演劇に少しでも携わったことのある人であれば分かるかもしれないが、演劇界はとにかく変わり者が多い世界。互いの個性が主張し合うがゆえにしょっちゅう揉め事は起きるし、その上大半の劇団が資金繰りに苦しんでいる。だからこそ、そんな俳優達が舞台上で演じる役一つ一つにそれぞれの人生が映し出されているように感じることもあるし、多くの観客が魅了される。そう考えると、シアターキャンプ内部のゴタゴタは演劇界的に見たらどこにでもあるありふれた日常の一コマと言える。
最後のショーは思わず涙してしまうほどの完成度の高さ。子供達のパワフルさはさることながら、裏方専門でこき使われてたグレンが、実は圧倒的才能の塊で、ものの一日でミュージカルの主演を務めてしまうのも圧巻と言わざるを得ない。生で観劇してたらボロ泣きしてスタンディングオベーションしてそう笑。
最後にちゃんとオチもつけつつ、やはりトロイはトロイだったかと思える終わり方も良かった。だたモキュメンタリーであれば、多少なりとも「取材班」の存在を示してほしかったのが唯一の心残り。