ジェイコブ

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

母を亡くし悲しみにくれるミアは、彼女を気にかける親友のジェイドに誘われ、SNSで話題の降霊術「トーク・トゥ・ミー」の降霊会にに参加する。気晴らしのつもりで参加した降霊会で、実際の霊に取り憑かれる非日常的な体験に魅了されたミア達は、「90秒以内」というルールに則り、ゲーム感覚で降霊を繰り返していく。ジェイドの弟のライリーも参加したある日、ライリーにミアの母親が憑くと、母ともっと話したいミアは、仲間の制止を振り切り、ライリーに90秒以上降霊をさせてしまう。ライリーは次第に自らの身体を傷つけ始め、やがて昏睡状態に陥る。ジェイドから責められるミアは母の存在を忘れられず、再び「トーク・トゥ・ミー」に手を出してしまう……。
A24最新作。監督を務めるのは、人気Youtuberのフィリッポウ兄弟。
一口に降霊術といっても、言わずとしれた「コックリさん」や、少し前に流行った「ひとりかくれんぼ」、海外ではブラッディメアリーがあったりと、その形態は様々ある。当初は霊障と呼ばれいた現象も、今や自己催眠によるものや家鳴りなどで証明されているが、人の持つ思いこみの力も侮り難く、遊びのつもりが精神に異常をきたしてしまう例も少なからずある。いずれにしても、良からぬことが起きてしまったとしても自己責任であるのは言わずもがなであり、本作のミアは正にその最たる例と言えよう。
本作の良かった点として、音響を効果的に使っている点と、約90分の中でホラーとしての魅せ方を意識した編集でまとめている点だろう。そこはYoutuberとしてこれまで活動してきた監督の力量、利点を大いに感じさせてくれたとこであり、若い世代を中心に本作がヒットしている大きな要因と考えられる。
悪かった点として、ホラー「映画」としての完成度は決して高くなかった事だ。その大きな要因として、上手く要点をまとめることを意識した編集が仇となり、物語にイマイチ入り込めなかったことだ。確かにホラーのビックリ演出や音響の使い方など、要所要所でテクニックは感じるものの、ミア家とジェイド家の親子間の関係や、主人公を取り巻く人達の人間性などを深堀りしきれていないため、感情移入ができないまま物語が進んでしまっている。また友人の一人が話した、霊と交信する際に使われた手の持ち主の過去や、見つかっていないもう片方の手の在り処など、会話の中で含みを持たせておきながら、結局最後まで回収せずに終わってしまっているのも残念な点。この辺りを深堀りすれば、ミア達がやった遊びがどれほど危険で愚かだったかを観客に思わせることができ、ホラー映画としての深みも増したのではと思えてならない。
最近心霊系Youtuberが逮捕されたこともあり、ある意味タイムリーなテーマでもあった本作。遊び半分で悲惨な事件のあった場所に肝試しに行く若者もミア達と同じ輩なわけで、そういった意味で本作は、SNSの発達で何でもかんでも真似したいと思って安易に禁忌に踏み込む人達への警鐘とも言える。