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丘の上の本屋さんのtenのレビュー・感想・評価

丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)
3.2
ほっこり癒やされる映画。
リベロみたいな大人が身近にいるのといないのとでは、知識の広がりがかなり違ってくるよね。出会えたエシエンは大層恵まれている。司書がちゃんといる国ではその人たちが担っているのだろうけれども、自国だと司書が蔑ろにされているし。リベロの存在が羨ましい。

最初に少年から感想を聞き出すときのリベロがすごい説教臭くて、うわぁ…と思ってしまったから、帰り際に残された少年のクリケットくんに対する評が、リベロのことを言っているようでおかしかった。

「先生」の探している本に対する表現が、紙の本好きには「分かる…!!!」しか出てこなかった。電子は嵩張らなくて便利ではあるけれども、手触りや紙の匂いは存在しないから。

『ユリシーズ』に関するひっそりとした打ち明け話には、実は私も…!と混ざりたくなってしまった。見てよあの分厚さを!
また読んでみようかしらん。まだ手放してはいないはず。

ピックアップされたアナグラムが素敵だった。イタリア語分からないから「そうなんだ」という感想しか出てこないけれども、組み替えてあんな言葉になるってだけで幸せな気持ちになれる。

これまでどこかしらで見聞きしてきた本にまつわる話がぎゅっとまとめられているだけ、といえばだけなのだろうし、ラストはまぁそうでしょうね、という展開で意外性もない。
いや、最後に勧める本は意外か。自国だと恐らく読んでいる子供は少数派だから。
でも知ってる本や作家が沢山出てきて、彼らの話に大きく頷いて、ちょこちょこ挟まってくる美しい景色に溜息を吐く時間は有意義だと思うんだ。

日記の存在が何か大きく作用するのかしらん、と思って見ていたけれども、あまりそういう感じではなかった。
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