ten

カラーパープルのtenのレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.5
歌が豪華!というか歌っている人たちが豪華。ビリビリする。
オープニングからブロードウェイミュージカル的。
最初から最後まで常に神を讃え続けていたから、ちょっとだけ『天使にラブソングを』を思い出した。
一瞬で忘れたけれども。

なぜならストーリーがとんでもなく重いから…!!!

「まっぴらだ!」って理不尽と闘い続けるソフィアがめちゃくちゃカッコよかった。
それだけに、セリーがハーポにいらんアドバイスをして、ソフィアがブチ切れるシーンにはぞっとした。
差別構造ができあがってるときって、被差別者の中にその構造の継続に加担する人がいるよね…。私はあれがとても怖い。
だからソフィアが去っていって、ちょっとほっとしたりもした。
でも「まっぴらだ!」って言い続けた結果、待ち受けていたのがあの仕打ちって。時代的にも国的にも当然あり得るのは分かるんだけれども、それにしたって心が折れた。冤罪とか普通に存在する国で生活する以上は我々も同じ道を辿りうる、と思うと明日は我が身でしんどすぎる。
ソフィアに対して「強い人」なんて呼び方はしたくない。
それでも彼女ですら神様と仲間がいないと闘い続けられない過酷な状況が遣る瀬ない。

長いことセリーがひたすらに耐え続ける地味な人だったから、ある種シンデレラ的な印象も受けた。
途中でがらりと変わった感じ。
自分を肯定する歌がすっごくカッコよくてパワフル。また聴きたい。

多くは語られないけれども、普通に考えたらネティの人生も波瀾万丈だよね。彼女を主人公にしても映画1本できそう。

最後の方のミスターの言動にものすごい違和感を抱いたんだけど、公式サイトを見ると、あれは映画オリジナルらしい?
加害者側に対する救いはどうしても釈然としないものを感じてしまう。
だからって居直るよりはマシってことなのかしらん。
何歳になっても自分の価値観を新たにして真っ当な人権意識を持つことは可能なんだから、みんなもやれよ!ってことなのか。
セリーたちの寛大さは際立つけれども。
神はそうすることを望んでいるのかも知れないけれども。
信仰を持たない人間には共感が難しい感覚なのか。

「めでたしめでたし」で幕が下りてはいるのに、もやっとしたものが残ってしまった。

ところでセリーの子供たちの父親って父親…?

【試写会(ジャパンプレミア)にて】
ten

ten