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神々の山嶺のtenのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
3.9
登山映画。
緊迫感とか静寂とか、あんな高い山も難易度の高い山もさっぱり登ったことはないのに、なんとなく分かる、ような感じとか、すっごかった。
これは説明してもしょーがないから観て!という感覚。
山の中だけでなく、町中でやりとりしてる人間の空気感とかもとても日本ぽくて、もちろん日本のアニメっぽさはなくて、ルクセンブルクとフランスのアニメーションは凄いなぁと。
縦書き看板の長音が横だったり縦だったりするのは当時もそういう風景だったんだろうか。

山を誰かと登ることのしんどさって、「予定を合わせて山に行く」から始まって、「相手が動けなくなったときに自分が何をできるか」ってところが一番しんどい気がしてる。
で、私は一人で確実に帰れる平和な登山しかしない選択をしているのだけれども、誰かと一緒に登ってる人はこういう選択をしているのか……と溜息。
文太郎の選択は羽生を楽にさせたのか、却って重荷を背負わせたのか。

登山家については長谷川恒男さんの名前を最近知ったくらい無知だから、
その人がモデルなんだろうなーという人が出てきて、ちょっとだけ親近感めいたものを抱いた。駅まで二人で語ってるシーン好き。

それにしても記者の深町、凄くない?羽生はずっと挑んでるからいいとして、この人、突然この山トライしてるよね?
もちろん日本からちゃんと考えて準備して行ってるんだろうけど、羽生を見失ったら道を間違えるかもしれないし、足跡はあってもどうやってそのエリアを突破したのか分からない状況なんて幾らでもあるよね?
体力作りはしていたとはいえ。走ってるだけで登れるようにはならないじゃん…。
実力が分からない人についてこられる羽生も怖いだろうな、と思わずにいられなかった。

自分は登山初心者だからさっぱり取り憑かれてないし、取り憑かれた人の気持ちを理解できるようになる日はこの先も来ないと思うけれども、そういうもんなんだな、という気はする。

よい映画でした。
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