boss

ザ・キラーのbossのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
4.5
Netflix制作のデヴィッド・フィンチャー監督最新作。
11月10日からNetflix配信開始。ただいま劇場先行上映中。
どうしても観たくて我慢できず劇場で観てきちゃった。

【あらすじ】
ある任務失敗により、雇い主を相手に戦うことになった暗殺者。世界中で追跡劇を繰り広げる彼は、それがかたき討ちであっても目的遂行に個人的な感情を持ち込まないよう自分自身と闘い続ける。

ほぼ全編モノローグ(主人公の1人語り)で展開するノワール風クライムサスペンス…コメディ。
明らかに万人受けしない通好みな作風だが、めちゃくちゃ面白かった。

プロフェッショナルな監督が描く、プロフェッショナルな暗殺者の静かで淡々とした日常…からの逃走&追跡劇。
主演のマイケル・ファスベンダーはアンドロイドのように血が通ってなさそうな殺し屋役が最高に似合ってるし、映像や演出、編集などはフィンチャーらしくバッキバキにキマってて最高にスタイリッシュだし、饒舌に自分の仕事術を語りながら暗殺準備をする描写も丁寧でリアリティがあって全てが最高にクール。
これが暗殺成功率10割の凄腕暗殺者かぁ〜と思っていたら、本番でありえない凡ミスをやらかし、さぁ大変w

そこからは目まぐるしく逃走、そして"後始末"に奔走する姿が描かれるんだけど、相変わらず画はスタイリッシュでバッキバキだし、やってることは確かにプロフェッショナルなんだけど、だんだんマイケル・ファスベンダーがどこか人間臭く滑稽に見えてくるのがポイント。

どんなにモノローグでプロの仕事術や冷静さを語ろうと、観客の頭には"いやでもコレあのミスをやらかしてその後始末やってんだよなーw"という半笑い感が付きまとう…というシュールコメディにもなっている。

劇中にわざとらしいコメディポイントは一切(ほとんど)ないし、注意しないと何が言いたかったのかわからないクライムサスペンスで終わってしまうかもしれない。
スタイリッシュな画作りを得意とする自分の作風を逆手にとって醸し出すこのシュールコメディバランス。さすが巨匠デヴィッド・フィンチャーだなーと思った。

飛行機カットは面白いし、中盤のセリフなしの映像だけでタクシーを探すシークエンスとかサラッとレベル高いことやってて観てるだけも楽しかった。

後から調べたら原作はフランスのグラフィックノベルらしい。確かにフランス人が好きそうな皮肉劇って感じがするかも。
boss

boss