芋けんぴ

ほつれるの芋けんぴのレビュー・感想・評価

ほつれる(2023年製作の映画)
4.0
ここ3年くらいだけど、案外俺邦画も好きだぞ?と思い始めてる。

これは良かった。

結婚もしてなければ恋人もいたことないけど、不倫ってどこか人生の悪戯めいたことも考えさせられて他人事であるうちは頭ごなしに「あかん」と言えないし、不倫を描いた映画に興味が惹かれつつある今日。

旦那の気遣いすぎたり、譲歩しすぎるとことか、ネチネチした感じが、でも付き合ってたころは「気遣いのできる優しい人」に見えたんだろうなって思えて、考えさせられるものがあった。

これってまぁまぁ凄い脚本の塩梅で、こういう倦怠夫婦ものって悪いようにしか描写されないし「なんでこんなやつと結婚したのよ」てなるけど、この映画の場合結婚した理由わかるもんね。

一緒に生活しなきゃ見えない部分、付き合ってるころは一人暮らしの部屋に閉じ込めてた本性というか、我がさ、一緒に暮らすと隠す場所なくなるし。演じる役割も付き合ってるころとはガラリと変わる。

仕事と同じで良いプレーヤーが決して良いマネージャーになるとは限らなくて、恋人から妻や夫に出世したら求められる役割は変わるから。

だから、不倫したのかな。

管理職よりやっぱり担当スタッフの方がいいや、みたいな感じでさ。

関係ないけどバツニとかバツサンの人って結婚までこぎつける才能はピカイチだけど、結婚生活を続ける才能は致命的に低い人なんだろうね。

こういうお話の行き着く先はわかり切ってるけど、話の筋よりも、この主人公はそのときどんな顔で何を言うんだろうっていうキャラとしてのリアクションが気になって、最後まで面白く見えた。

演出もいちいち気が効いてるというか。

例えば冒頭の門脇麦が電車に乗り込むシーン。不倫相手の染谷くんが先に乗ってて、通路側の席に座って「こっちだよ」てわかりやすく合図送ってくれてるんだけど、いざ彼女が来ると彼女と同じタイミングで荷物を上に上げて、アウター脱ぐんだよね。

これが細かいけど良く出来てて、染谷くんは「ひょっとしたら来ないかも」て思って待ってるんだよね。不倫してる人特有かもしらんけど、期待しすぎず、ダメだったときのことも考えてる。互いに家庭があるし、急な用事が入る場合もある。だから、電車を降りられるようにしてる。

グランピング好きだから一人で行ってたかも知らんけど。

あと黒木華に見られて、門脇麦が指輪外すシーン。あれ見た瞬間に「しまったー!いつから指輪してた?見逃したー!」てなった。あそこなんか後半の展開につなぐためのめっちゃ大事なシーンなのに、カットが変わってカメラが手元に寄ったりすることなく引きのまま撮ってんだよね。

でも記憶に残っちゃう。
さりげなさすぎるから観た人全員が「私じゃなかったら気づかなかったかも」て思ってそうだけど、多分ちゃんとフックにはなってて、みんな気付けるんだろうな。

演技もみんな自然。
服装も、不倫旅行だからか、気合い入れてない感じがめっちゃリアル。

こういう映画もっと観たい。
ていうか、日本映画ってやっぱ面白いものは面白いね。当たり前だけど。

今年のベスト10には確実に入りました!
芋けんぴ

芋けんぴ