ひでやん

虎の尾を踏む男達のひでやんのレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
3.9
兄の源頼朝に追われた義経一行が、虎の尾を踏む気持ちで関所を通過する姿を描く。

北陸道を奥州へ向かって歩く山伏姿の義経一行。この先にある安宅の関では地頭富樫左衛門が一行を捕らえようと待ち構えていた。

関所には既に7人の作り山伏という情報が入っているが、進むも退くも袋のネズミと悟った一行は、正面からの突破を決行。

厳重な警備で固めた関所を守る富樫は、義経一行に対して本物の山伏か否か問い詰め、猜疑心の強い梶原の使者は、一行の一挙一動に目を見張る。

押し付けられる無理難題、畳み掛ける口撃、射抜くような視線、わずかな綻びも命取りとなる緊迫した状況の中、その場の機転でピンチを切り抜けていく弁慶。

特に勧進帳の読み上げはハラハラした場面で、堂々たる態度の弁慶に対して、おどおどした強力の表情が滑稽だった。

エノケンこと榎本健一が演じる強力は、静寂の中に騒々しさ、緊張の中に緩和を与える存在で、終盤の舞いは実に愉快だった。

能、歌舞伎、ミュージカル、時代劇、それらの要素を取り入れたスリリングな突破劇だった。
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