茶一郎

首の茶一郎のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.8
 『御法度』のように衆道/男色を軸に本能寺の変を解釈した、 予告編から想像できる戦国時代版「アウトレイジ」とは少し異なる、後味は『龍三と七人の子分たち』に近い、後味は『TAKESHIS'』に近い、奇妙で怪しい魅力に溢れた作品だった。**
 「アウトレイジ」シリーズの「役職」だけが前面に出た冷たい乾いたパワーゲームではなく、本作は武将ヤクザ同士の情感、恋愛、嫉妬を縦軸にしたエモーショナルな権力闘争。そこに原作の語り部であり、松本人志氏を想起されられる木村祐一さん演じる上方落語の祖によるお使いムービー、『アキレスと亀』、『アウトレイジ 最終章』から続くビートたけし氏と大森南朋氏の漫才的コメディが合流する。全く異なる三つのジャンルと演技テンションが混ざり合っているのが、本作の奇妙な魅力だと思った。
 農民上がりの羽柴秀吉に自身の半生を重ねながら、「偉人化」されてきた歴史上の人物を痛快に「人間化」、ツッコミを入れていく様子は、奇しくも同時期公開のリドリー・スコット監督による『ナポレオン』と重なっている。

*podcast「映画世代断絶」で詳しく話しました。
**1993年の時点で本作の構想を北野監督は語っているので、『御法度』より先に発想はあった。「武がたけしを殺す理由」
茶一郎

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