茶一郎

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの茶一郎のレビュー・感想・評価

4.7
 間違いなく後期スコセッシ映画でしか得られない映画栄養素がある。“(叔)父”と“愛”とに引き裂かれる『アイリッシュマン』と対をなすような熟成版『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。
 スコセッシの長編監督デビュー作『ドアをノックするのは誰?』では、監督自身を反映した主人公が、ジョン・フォードの『捜索者』の話をきっかけに女性と交流を深める。『リオ・ブラボー』を無邪気に引用する。そのシーンを思い出した。西部劇で育ったアメリカの監督スコセッシが、かつての無邪気さを捨て去り、もしくは懺悔するかのように「自ら舞台上に上がり」西部劇の、アメリカの暗部を浮き彫りにする。
 壮大な原作から最高純度の美しさのラブストーリーを抽出し、『波止場』の裁判シーンに到達した。後期スコセッシ映画の熟成された編集、この豊かな「スコセッシ時間」は3時間26分でも少ないくらいだった。
茶一郎

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