肉鹿

夜明けのすべての肉鹿のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
3.3
PMS(月経前症候群)とパニック障害という理解されにくい疾患を抱えるふたりは、小さな会社で出会う。その出会いは夜空の星のように朧げだけど、瞬くほど夜明けに近づいていく———三宅唱監督作品。

これはお薬です。観るだけで心に平穏が訪れ、平常心を保てれるようなお薬。

出てくる人たちもみんな清廉。一様に他人を思いやり、傷付けられたりしても相手を慮る優しさに満ち溢れてる聖人ばかり。上白石さんに傷付けられるヨガのお姉さんですら激昂しないんだから治安のよさがまるで文京区!この映画の世界観なら横断歩道を無視して渡る人すらいなさそう🤤

そのなかである種怪物のように描かれているのが上白石萌音さん。
自分の意思とは関係なくPMSによって人格すらも破壊されるほどの攻撃性が暴れ出すのがほんと切ない…
聖人な世界だけに余計に思い悩んで打ちひしがれちゃいそう🥺

そんななか、最大の理解者となる松村北斗さんとの間に築かれるのが恋愛じゃないのが素敵。
いっしょに帰ったりお互いの家にも普通に行き来するけど、甘酸っぱいドキドキなんて微塵もなく上白石さんが目の前でプリングルス的なポテチ缶の最後のポテカスたちを一気飲みする姿で完全友情確定😂

松村北斗さんは自然光との相性の良さが抜群!
三宅唱監督の代名詞になりつつある16ミリフィルムによる粗い映像からの顔に降り注ぐ自然光の美しさにはゾクっと鳥肌が立つほど。こんなにも柔らかい光が映える顔してたんだね🤤

三宅唱監督の前作「ケイコ 目を澄ませて」と比べてもカウンターパンチのような狙い澄ましたように決まるカットはまったくないけど、この過度に煽らず淡々とページをめくるように時間が過ぎ去っていくのが原作を読んだ製作者たちの読書体験を追憶させてもらってるようでおもしろかったです。

そういう点では同じ原作者の「そして、バトンは渡された」との対比と考えても楽しいかも!
あっちの映画は語るに語るね~だったけど、こっちは真逆で省きに省くね~😂
どっちが優しく感じるかは人それぞれだろうけど、断然こっち派。

それでもこんな優しい世界に癒されるほどわたしはやわじゃない。
だんだん「王様ランキング」に通ずるような薄ら寒さを感じてた。
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