ケンタロー

アナログのケンタローのレビュー・感想・評価

アナログ(2023年製作の映画)
3.5
ビートたけし原作の恋愛小説を映画化。純愛の美しさ尊さに憧憬の念を抱きつつも、同時にある種の狂気も感じずにはいられない。ビートたけし(北野武)の表現する愛には必ず何かが欠けた者同士の哀しみと傷みが伴われる。障害や病、そして、罪といったものを抱えていても貫かれる純粋すぎる愛は時として狂気に等しい。

本作を見ていて思い返したのは『HANA-BI』『あの夏、いちばん静かな海。』『Dolls』で、やはり死生観が一貫している。もちろん本作を監督したのはタカハタ秀太さんなので演出もテイストも異なるが、コレを北野武監督が撮ったら相当良い作品になったのではないかと思えてしまった。落語、ピアノ、漫才、海、ビートたけしならではの要素がギュッと凝縮されている物語だった。

しかし、一つ残念だったのは、どうしてもリアリティに欠けた御伽話っぽさが気になってしまったことだ。原作は未読なので時代設定があるのかどうかは不明だが、今の現代でやるには無理があるように思う。輸入雑貨を扱う商社に務めながらスマホの一つも持たずに居られるとは思えない、ましてや身の回りの世話をしなければならない父と同居ともなれば緊急連絡のためには持つのが普通であろう…。そういう視点から見てしまうと、みゆきという女性はなかなかだなって思えてしまうのだ…笑 せめて10〜15年くらい前、携帯電話が当たり前でスマホの普及率はまだまだ低かった頃の時代設定であれば納得出来ただろう。

反面、焼き鳥屋のシーンなど俳優陣の自然過ぎる演技には驚かされたし、見ていてとにかく幸せな気分に浸れるほどの素晴らしさだった✨

ちなみに個人的には善人過ぎる登場人物の中で唯一、絶妙なバランスのキャラクターの上司役を演じた #鈴木浩介 さんに拍手です👏